法律

借主が物件の一部を第三者に貸した場合、 賃貸契約を解除できる?

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借主が物件の一部を第三者に貸した場合、 賃貸契約を解除できる?

物件を貸している入居者が、例えば、親せきの子どもが近くの大学に通うことになった場合などに、使用していない部屋に下宿させるというケースもあるかと思います。
もし、借主が第三者を自宅の一室に住まわせることにした場合、大家はそれを契約違反として、賃貸物件を解除することは可能なのでしょうか。

1.民法上、無断転貸は契約解除できる

賃貸物件の借主が第三者に物件を転貸(又貸し)することは、法律上どのように考えられているのでしょうか。
民法では、以下のような決まりになっています。

1.賃借人は、賃貸人の承諾なしにその賃借権を譲渡したり賃借物を転貸したりすることはできない。
2.賃借人が第三者に賃借物の使用収益をさせたときは、賃貸人は賃借人との契約を解除することができる。

つまり民法上は、借主が大家に無断で物件を第三者に転貸(又貸し)することは違法であり、契約解除事由に当たるとされているのです。
これは、賃貸契約がそもそも貸主・借主双方の信頼関係を基礎とする長期かつ継続的契約であることが背景にあると考えられます。大家にとって、自らが所有している物件はとても大切な資産です。それを、借主が信頼に足る人物であるから貸しているのであり、知らない第三者に使用させるために物件を貸したわけではありません。
よって、大家の許可なく第三者に転貸することは、信頼関係への裏切りであり、背信行為であるとされているため、法律は借主の第三者への無断転貸を認めていないのです。

2.「特段の事情」があれば契約解除はできない

ところが実際は、法律上の規定が、いかなる場合にも適用されるわけではありません。
過去の判例では、「賃借人が賃貸人の許可なく物件を第三者に使用収益させたとしても、第三者に転貸した行為が背信的行為であると認められない特段の事情がある場合は、賃貸人の契約解除権は発生しない」とされています(最二小判昭和28年9月25日)。
つまり、借主に物件を無断転貸されたとしても、大家は必ずしも賃貸契約を解除できるわけではないのです。大家が賃貸契約を解除しようとする場合は、借主の行為が信頼を大きく損ねると言えるだけの事情が必要になります。
したがって、前述した「親せきの子どもが自分の家の近くにある大学に通うことになったので、余っている部屋に住まわせている」くらいの事情であれば、「信頼関係が破壊されるとまでは言えない特段の事情」であると考えられるため、このケースでは賃貸人による契約解除は認められない可能性が高いでしょう。

3.無断転貸の予防方法・対処方法とは

たとえ一室だけであっても、借主が無断で第三者に部屋を使用させることを防ぐには、あらかじめ予防措置を取っておくことが必要です。
最初に交わす賃貸契約書に、以下の2点を盛り込んでおくと、借主にあらかじめ認知させることができ、抑止力につながります。

  • 家の一部でも第三者に使用させるときは、賃借人は賃貸人に事前通知する義務を負う。
  • 契約内容に違反した時には即契約を解除する。

もし、借主が第三者に無断で部屋を使わせていることが発覚した場合は、たとえ一部屋であっても、不動産業者に一報を入れるとともに、弁護士などの専門家に相談しましょう。
当事者間だけで穏便に解決できればよいですが、なかなか折り合いがつかない場合もあるかもしれません。第三者が入ることで冷静に話し合いができる可能性も高まるので、専門家を交えて協議することをおすすめします。
上記の対応は、発覚次第速やかに行いましょう。大家が明確に禁止する姿勢を打ち出しておらず、第三者に部屋を賃貸している状況を知りながら放置していると、暗に承認しているとみなされ、契約解除できなくなるおそれがあるからです。

まとめ

  • 法律上は借家の一部でも賃貸人に無断で転貸すれば契約解除事由になりうるが、実際には、そこまで厳格に法律が適用されるわけではない。
  • 実務上は、大家の信頼関係を失うほどの特殊な事情が借主の側になければ、家の一部を第三者に使わせるくらいのことは容認されることが多い。
  • トラブルを避けるためには、あらかじめ契約書に「家の中の一部でも第三者に使用させる場合は事前に賃貸人の承認を得る」「契約内容に違反した時は契約を解除する」などの文言を入れておく。
  • 借主が第三者に部屋を使用させていることを知りながら放置していると、事実上その状態を大家が認めたことになる。容認できない場合は、物件を管理している不動産業者や弁護士などの専門家に相談する。

家の一部を使用する第三者が、借主の親せきなど身元が確かな人物であれば、大きな問題は起きないかもしれません。しかし、借主が第三者に家の一部でも使用させる場合は、大家や管理業者へ一報を入れるよう、あらかじめ契約書の中で明確にしておくと安心でしょう。

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