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原状回復工事と「バリューアップ工事」 費用対効果と予算のバランスが大事

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原状回復費工事と「バリューアップ工事」 費用対効果と予算のバランスが大事

賃貸物件の入居者が退去すると、次の入居者のために原状回復工事を行ってから募集をするのが一般的です。
ハウスクリーニングや破損個所の修繕などが中心の原状回復工事の他に、建物の資産価値を上げるために行う「バリューアップ工事」があります。
今回は、それぞれの予算の決め方について、費用対効果の面から考えていきます。

1.原状回復工事の費用はどのくらい必要?

原状回復工事の費用は、築浅物件とそれ以外で大きく異なり、新築後10年を経過したころから、かかる費用が増えていきます。
築浅のうちは、ハウスクリーニングのみで終わることがほとんどですが、築10年を超えると、クロスの張り替えや、クッションフロア・畳の表替えなど工事の項目が増えていきます。築15年を超えると、エアコンをはじめ室内の設備や、水回りの設備なども交換しなければならず、さらに費用がかかってきます。
そこで、予算の決め方ですが、わかりやすいのは何カ月分の家賃をかけて原状回復工事を行うのが適当かということです。
平均居住年数にもよりますが、築浅物件であればハウスクリーニングのみで済むことも多いので、家賃の2カ月程度の予算があれば、網戸やパッキンの交換などをしても、十分おつりがくるでしょう。築10年程度であれば、クロスやクッションフロアの張り替えが生じるので、家賃の3カ月から5カ月程度は必要です。築15年を超えると、一般的に水回りのリニューアルが必要になるため、家賃の6カ月以上が目安となります。
ここで、入居者の故意過失による費用負担が発生すれば、原状回復工事の費用は変動します。また、目安金額に幅があるのは、都心部と郊外の家賃相場の違い、戸建てとマンションの工事費用の違いなどがあるためです。

2.バリューアップ工事の費用対効果の考え方

次に、バリューアップ工事の予算の決め方です。原状回復工事と異なるのは、物件の価値を上げる、または維持するために行うという点です。したがって予算を決める時には、投資した金額に対して、どのくらいリターンがあるのか、回収期間はどのくらいか、空室期間がどの程度短縮できるのかを考えなければなりません。
例えば、都内の物件で、セキュリティー対策としてインターホンをモニター付きに変更する場合、1台25,000円かかるとします。
この工事を行うことにより、家賃を前回の募集時から2,000円下げずに済むのであれば、その分を収益と考え、2,000円×12.5か月=25,000円、つまり12.5カ月が回収期間となります。
平均居住年数を3年とすると、2,000円×36か月で72,000円、家賃が増えたことになります。1年間で投資した金額の96%を回収し、またモニター付きインターホンは15年程度は使えるため、費用対効果は非常に高いということになります。
また、この設備の工事を行うことにより、セキュリティーに敏感な女性も入居しやすくなると考えられます。その結果、平均空室期間を2カ月から1カ月に短縮することができれば、家賃が5万円ならば、5万円の収益が改善されます。
地方の場合は、家賃を上げることは厳しいかもしれませんが、平均空室期間が6カ月から3カ月に改善されれば、同じ家賃5万円でも15万円は収益改善が可能になります。
このように、バリューアップ工事は、ポイントを押さえて行うことができれば、収益改善に大きな結果をもたらすというわけです。

3.原状回復とバリューアップ工事の予算バランス

今回は、モニター付きインターホンを例に挙げました。バリューアップ工事は、原状回復工事と一緒に行うことが多いので、両方の予算のバランスを考える必要があります。
例えば、モニター付きインターホンの予算を捻出するために、クロスの張り替えではなくクロスの塗装にして予算内に収める、キッチンの修繕をシートの張り替えと蛇口の交換のみにして予算を抑えるなどの工夫が必要になります。
また、室内だけではなく、外構についてもバリューアップ工事を行うことにより、建物価値の維持、向上が期待できます。外構工事といっても、ポストの交換や照明器具、ダストボックス、館銘板(建物全体の表札)、号室プレートなど、比較的費用のかからないところから始めるのもおすすめです。内覧者や入居者から見て、今挙げたところは、よく目が行くところなので、きれいにしておきたいですね。

まとめ

  • 原状回復工事の費用は築年数で大きく異なる。
  • 築浅で家賃の2カ月分、築10年で3カ月~5カ月分、築15年以上で6カ月分以上が目安である。
  • 大規模なリフォーム工事を行う際は、大きく家賃アップが期待できる、空室期間の短縮が見込める(例:半年→1カ月)など、費用対効果を試算してから投資する。
  • 原状回復工事とバリューアップ工事の予算のバランスを考えて調整する。

工事費用への投資が、収益改善に大きくつながるよう、費用対効果をしっかり考えて行いましょう。今回の記事が皆さまのご参考になれば幸いです。

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