私はファイナンシャルプランナーとして、個人事業主や小規模事業者の資産活用や福利厚生、経理代行など数多くの相談を受けてきました。現在、サラリーマンを取り巻く賃金環境は年々悪化の一途をたどっており、現役世代で働いているうちは良いのですが、リタイア後は生活水準を落さざるを得なくなる人も数多くいます。
こうなると副業や投資によって収入の上乗せを検討する人もいますが、副業禁止の会社も多く、現実的ではありません。
そこで、不動産投資による収入増加に注目が集まるようになってきました。
1.不動産投資のメリットについて
ひと昔前までは「投資」というと、ある程度の資産を築いた人が、さらに多くの利益を求めて行うものとされてきました。数百万円単位の売買を想定しているので、社債も株式投資も今から見れば極めて高額の手数料が設定されており、庶民には縁のないものでした。
しかし、近年では投資環境の整備が進み、以前であれば個人では投資が難しかった社債や、高額な手数料が必要だった株式投資も気軽に行えるようになってきました。今や投資はワンコインから始めることができる時代です。
その様に多くの選択肢がある中で、あえて不動産投資をおすすめするには理由があります。
不動産投資には他の金融商品と比較して、以下のようなメリットがあります。
2.あえて現物!不動産投資を行う理由
投資の王道といえば、株式投資やFXなどがイメージされます。これらは上記のメリットをほぼ備えていないばかりか、短期間で激しい値動きがあります。
株式投資などは会社の経営が悪化する事由が生じた場合、比較的安定性に優れている東証一部でも株価が何十分の一になってしまうことも珍しくありません。FXについても、ポンドなどは「殺人通貨」と言われているほど価格が激しく動くので、一夜にして多額の借金を背負ってしまうこともあります。
しかし、「現物」である不動産の場合は、値動きは安定していて、土地・建物といった資産価値を裏付けるものがあるので、価値がゼロになることはありません。また家賃収入は株式の配当金と比べて安定して得ることができますし、FXのように自分で頻繁に売買を行う手間とも無縁でいられます。
3.少子化は本当に恐ろしいのか?
不動産投資を始めようと考えた場合、頭をよぎるのが少子化による人口減少の問題です。人口が減っていく日本で、果たして不動産投資は正しい選択なのでしょうか。
確かに、人口減少は大きな問題です。地方での人口減少は極めて深刻な状況となり、2050年までには四国・中国地方、北海道の一部で無居住地域が生じると予想されています。
しかしその一方で、人口の都心部への集中が、より顕著になっていきます。現在でも人口が増加している自治体はあり、そうした場所では将来も盛んな住宅需要が生じ続けるものと予想されています。
4.所有する物件のエリアは厳選する!
価格が安いからといって、人口が減少している自治体に不動産を所有しては、人口減少の波に飲み込まれてしまいます。不動産投資は、場所がすべてと言ってもいいほど周辺環境に左右されるので、どこに物件を所有するかが重要です。
現在は、人口の半数以上が人口20万人以上の都市部で生活しています。そのように規模が大きく、人口が増加している自治体を選択しましょう。
そのような自治体として、最初に思い付くのが東京23区ですが、誰もが思い付くために不動産価格が高騰しています。不動産価格の上昇は、不動産利回りの低下を意味しており、利回りが低下すると、金融機関からの融資の際に貸付額や金利などの面でデメリットを被ります。
そこで、東京以外で上記の条件に合致する自治体を検討してみるのが良いでしょう。大阪市・福岡市・札幌市・川崎市・名古屋市・さいたま市などが挙げられます。
5.最初はどんな物件を買うべきか?
マンション・アパートの一棟買いは収益が増加しやすく、物件が一箇所に集中するため管理が行いやすくなります。さらに部屋を複数所有できるので、空室の発生による収入低下のリスクを小さくすることができます。このように多くのメリットがありますが、購入金額が極めて高いため、最初の物件として購入できるのは限られた人になるでしょう。
そこで、最初に購入する物件としては、投資金額が少なくて済む中古マンションの区分所有が現実的な選択肢となります。中古マンションを購入する場合に注意したいのが、修繕費の積立額と修繕実施計画の確認です。
すでにマンションの配管・外壁などの修繕予定があって、積立額が不十分の場合は、各部屋に負担金が生じます。思いがけない出費とならないよう注意が必要です。修繕関係については、仲介する不動産会社に聞けば回答が得られると思います。
また、物件選択の際には、周辺の家賃相場の確認も大切です。
オーナーチェンジ物件などで高い収益率が提示されていても、周辺の家賃相場と比較して高額な場合は、その価格で貸すことは難しくなり、家賃を相場程度まで値下げする必要が生じると思われます。また、大学のキャンパスがあるから、近くに大きな会社があるからといった一つの要素に頼り切るのは危険です。これらの要素がなくなった場合、次の借り手に苦労することになるからです。
まとめ
- 不動産投資は、金融機関からの融資が受けやすい、長期所有が前提で利回りが高いなど、他の投資方法にはないメリットがある。
- 激しい値動きや価値がゼロになる可能性のない「現物」であることも、不動産の特徴である。
- 少子化による人口減少には地域差があるので、人口動態が良好な自治体の物件を選ぶ。
- 東京は魅力的だが価格が高いため、他の優良な自治体に目を向けてみることがおすすめ。
- 初心者におすすめは、中古マンションの区分所有。家賃相場の推移や修繕関係の確認を。
不動産投資による収益アップをご検討の方は、中古マンションの区分所有から始めてみてはいかがでしょうか。将来的な見通しの良いエリアを厳選し、修繕計画や家賃相場をしっかりと確認して、効率の良い投資となることを願っています。