不動産経営と切り離せない税金の問題。基本的な知識を身につけ、正しく節税することは利益アップに大きくつながります。ここでは、節税対策のなかでも、今すぐに見直すことのできる「経費」について見ていきましょう。
1.所得税の納税額を抑えるには経費がカギ!
実際に納める所得税の金額はどう決まるのか。次の3ステップをおさらいしましょう。
- 収入から経費を差し引き、所得金額を計算する。
- 所得金額から所得控除を行い、税率をかけて所得税額を決定する。
- 所得税額から税額控除を行い、実際に納付すべき金額が決まる。
つまり、差し引ける経費が大きければ大きいほど、課税される所得金額は少なくなります。そのため、必要経費をもれなく計上することが、節税においては大事なポイントとなります。
2.ズバリ「経費」にできる判断基準って?
個人事業主の大家さんが、いろいろな支出を経費にするための判断基準をご紹介します。一言で表すと「その支出によって、不動産収入を獲得できるかどうか」です。
土地や建物の購入に関する税金や、維持管理のための費用、また、移動に使う車のガソリン代、情報収集のための新聞雑誌・書籍代、連絡用の通信費用などは、すべてビジネスのために必要な支出です。「経費にできるかな?」と思った支出に関する領収書や利用明細はしっかりと保管しておきましょう。
3.忘れずにチェック!経費にできる19項目
参考までに、不動産投資において経費にできる項目を一覧表にまとめてみました。なお、ここでは事業的規模(※)の大家さんであることを前提としています。
※建物の貸付の規模が5棟10室、あるいはそれに準ずる判定基準に当てはまり、不動産貸付業として事業的な規模と見なされる場合。
項目 | 注意点等 |
---|---|
管理費 | 管理会社に支払った金額。支払明細や領収書など、金額と日付がはっきりわかるものを用意しましょう。 |
水道光熱費 | 共用部分の水道代・電気代。外灯の電気代など。 |
保険料 | 火災保険・地震保険の保険料。数年分をまとめて払っている場合でも、1年分しか計上できません。 |
修繕費 | 規模によって計上できる場合があります。部屋の大規模なリフォームの場合、「資本的支出」といって経費に計上できない場合もあるので注意。この場合、建物の取得原価に含め、減価償却を行っていきます。 |
交通費 | 物件の視察、管理会社や仲介会社との打ち合わせなど、不動産投資に関わる用事ならば、基本的に可。領収書が出ない場合は、出金伝票に、「日付、支払先、金額、内容」を記入しておきましょう。 |
車両費 | 仕事で使用する車両のガソリン代や、駐車場代、高速道路料金など。その他、維持に必要な修理費や保険料なども。 |
通信費 | 管理会社や仲介会社とのやり取りを電話で行う場合もあるので、一定額を計上できます。1週間のうち、どのくらいやり取りをしているかを考え、合理的に説明できるようにしてください。 |
交際費 | 喫茶店、レストラン、居酒屋などでの関係者との飲食費。「いつ、どこで、だれと」がわかるようにしておきましょう。 |
専従者給与 | 事業主と生計を同じくするなどの基準を満たし、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出済みの場合。専従者給与の全額を経費として計上できます。 |
管理費 修繕積立金 |
不動産投資用の物件として区分マンションを保有している場合に発生します。 |
借入金の金利 | 投資用の不動産を購入するために金融機関から借り入れをした場合、金利分が経費に計上できます。 |
減価償却費 | 建物付属設備および構築法について、2016年4月以降に取得したものは、償却費の額が毎年均等になる定額法で計算します。それ以前に取得したものは、償却費の額が毎年少しずつ減る定率法か、定額法のどちらかを選択できます。(ただし建物に関しては、1998年4月以降は定額法) |
消耗品費 | 事務処理に必要なプリンタ用紙、インク、文房具などの購入。 |
広告宣伝費 | 管理会社に物件の広告活動を頼んだ場合に払う費用。 |
貸倒引当金 | 取引先が倒産し、売掛金が回収できない場合を見越して計上します。 |
固定資産税 不動産取得税 登録免許税 印紙税 |
投資用の不動産を購入する際に支払う税金等は可。ただし、自宅用の不動産など、あくまで事業主個人のためのものは除きます。 |
司法書士報酬 | 投資用の不動産を購入する際、登記を司法書士に委託した場合に支払う報酬。 |
仲介手数料 | 賃貸の場合、不動産会社に支払った金額を経費として計上できます。ただし、売買の仲介手数料は「固定資産の取得価額」となりますので注意してください。 |
セミナーへの参加費 | 不動産投資に関係あると認められるセミナーなら、参加費を経費として計上できます。研修費などの科目で処理しましょう。 |
4.仕事と生活にかかわる家事関連費は按分率で
個人事業主の大家さんの場合、自家用車を仕事に使用したり、固定電話や携帯電話を仕事の連絡に用いたりすることがあるでしょう。こうした事業と生活の両方に関わる費用を家事関連費と呼び、使用割合(按分率)によって経費分を算出します。これを家事按分と呼びます。たとえば、週5日働いて週2日休みとしているなら、この割合で家事関連費を振り分け、ビジネスで使う部分の支出だけを計上しましょう。合理的な理由に基づいて振り分けることが大事です。また、自宅と賃貸物件が同じ建物になっている大家さんの場合、光熱費や家賃などを面積の割合から算出します。
5.ところで、経費にならない支出って?
上のリストにも挙げたように、不動産購入のための借入金のうち金利は経費となりますが、元本部分は経費になりません。そのほか、経費とできないものの例として、事業主個人のスポーツクラブの会費、健康診断の費用などがあります。個人事業主で家族以外の従業員がいない場合、福利厚生費を経費とできません。ここに挙げたのは一例です。
まとめ
あらためてリストをチェックしていただき、経費の計上漏れはなかったでしょうか。必要経費をしっかり計上することは、最も取り組みやすい節税対策のひとつと言えます。どこまで経費にできるかを常に考え、必要なものはすべて計上できるよう、日頃から心がけておきましょう。