法律

宅地建物取引業者による人の死の告知に関する国交省ガイドライン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

はじめに

令和3年10月8日国土交通省では、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」での議論を踏まえ、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。

参考URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html

不動産取引において、瑕疵とは、欠点や傷といった意味です。特に「心理的瑕疵」は、気持ち的に取引するのに抵抗感が出てしまうということです。たとえば、購入しようとしている不動産や借りようとしている不動産の前の使用者がそこで亡くなったというような場合が代表例ですね。

俗にいう「事故物件」にあたるかどうかということですね。

不動産取引にあたっては、取引の対象不動産において過去に生じた人の死に関する事案について、宅地建物取引業者による適切な調査や告知に係る判断基準がなかったため、取引現場の判断が難しいく、円滑な流通や、安心できる取引が阻害されてといわれておりました。

国土交通省では、令和2年2月より「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」において検討を進め、同検討会での議論や、本年5月から6月に実施したパブリックコメントを踏まえ、標記ガイドラインをとりまとめました。

1.お客様に告知しないといけないケースの基準

本ガイドラインは、取引の対象不動産において過去に人の死が生じた場合において、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、現時点における裁判例や取引実務に照らし、一般的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものです。

法的にそれらを規定するものはありませんが、どのような場合に告知し、どのような場合には告知しなくてよいのかガイドラインにて提示されました。

まず原則としては「宅地建物取引業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならない」としていますが、この「判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合」が今ひとつ抽象的ですが、告げなくてもよい場合を挙げています。

わかりやすく説明しますと、

告げなくても良い場合①:取引の不動産で発生した自然死や日常生活での不慮の死

(売買・賃貸借ともに)取引の不動産で発生した自然死や日常生活での不慮の死については告げなくてよいとなっており、これは病死や日常生活の予期せぬ転倒、誤嚥などに起因する急死などをさします。※事案発覚からの経過期間の定めなし。

老衰、持病による病死など、いわゆる自然死及び、自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、自然死と同様に、原則として、これを告げなくてもよいということです。

告げなくても良い場合②:対象の不動産・共用部において①以外の死または①の死で特殊清掃が行われた場合、約3年以上が経過

その他の場合として、(賃貸借における)取引対象の不動産・日常的に通常使用する共用部分において発生した①以外の死または①の死で特殊清掃が行われた場合、約3年(特殊清掃が行われた場合は発覚から)が経過していれば告知しなくてよいとなっています。

これは、集合住宅の共用部分は賃貸借取引の対象不動産と同様に扱い、自殺・殺人などの死や自然死の中でも発見されなかったため特殊清掃が必要な状態になったもののうち、廊下などの通常使用する共用部分で起きた事案は、3年が経過した後は告知しなくて良いとされています。3年間は告知義務有ということになります。

告げなくても良い場合③:通常使用しない共用部分で起きた①以外の死または①の死で特殊清掃が行われた場合

(売買・賃貸借ともに)取引不動産の日常的に通常使用しない共用部分で起きた①以外の死または①の死で特殊清掃が行われた場合には、経過期間を問わず告知しなくてもよいとされています。

原則としてこの①から③に当てはまらないようなケースにおいては告知の必要性があります。

但し、①から③に当てはまるような場合でも、事件性・周知性・社会的影響力が高い事案においては告知しなければならないとしています。逆に言うと、共用部分の廊下で殺人等があった場合、そこを通行するお部屋には告知義務があると言えます。

2.告知の内容

告知内容としては発生時期、場所、死因(不明な場合はその旨)及び特殊清掃等が行われた場合にはその旨を伝えることとなっております。

たたし、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はないとなっています。

3.宅地建物取引業者に課せられる調査義務

では、宅地建物取引業者は取引前にどこまでの調査義務が課せられるのでしょうか。

これについてのガイドラインとしては、自ら近隣への聞き込みや調査までをする必要はなく、取引不動産の売主・賃貸人に対して、告知事項がある場合には記載してもらうところに義務があるとしています。

4.まとめ

今回は発表されたガイドラインの告知しなければならないケースについての主な内容は上記のとおりとなっております。

宅地建物取引業者としては、買主や借主が取引するのに抵抗のある事柄の中でも特に今後の使用に問題が生じない事柄について、告知しないで取引ができるのであればそのほうが当然スムーズにいきますし、円滑な流通にもつながります。不動産賃貸業を営むオーナーさんにとっては、それによって借り手がつかなくなれば大きな問題となります。

この告知義務はオーナーさんにとって重要な関心事と言えます。人は必ず誰しも死を迎えるわけですから、生活を営む中で死が訪れることはいわば自然なことといえますので、今後具体的な事例やイレギュラーなケースにおける実務の運用についても注目する必要があります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事が気に入ったら 「いいね!」をして最新記事をSNSで購読して下さい。

大家CLOUDをフォロー