法律

家族信託とは?

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家族信託とは?

 1.認証症になった場合の法制度

平成12年に成年後見制度が施行されてからその利用者数も年々増えています。

成年後見とは、認知症などにより意思能力・判断能力が不十分になった場合に、法律上の行為ができなくなるため、代わりに法律行為を行う人を家庭裁判所に選任してもらう制度です。

法律行為とは

法律行為とは、銀行での取引やさまざまな契約行為などを指します。

認知症になった親の代わりに子が銀行に行って手続きができないものなのでしょうか。

これができないのです。

もちろん、ATMでキャッシュカードを使用してお金をおろす分には銀行側も誰も管理できませんからできますが、窓口ではたとえ親子だと証明しても手続きできません。

成年後見人

こういった行為を法律上の代理人として行うのが成年後見人です。

成年後見人を選任するには、まずはかかりつけの医師などに裁判所所定様式で診断書を作成してもらいます。それを添付して通帳のコピーや財産状況、収支状況などの報告書とともに成年後見人選任の申し立てをします。

司法書士などの専門家に申立書の依頼をすることもできます。報酬としては事務所単位で異なりますが、10万円前後が相場ではないかと思います。

申し立てが終わると、そこから裁判所書記官が審査に入り、調査官が本人さんと面談したりします。その後成年後見人が決まりますと、審判書が発行され後見がスタートするのです。だいたい、申し立ての準備から後見が開始するまでに3か月から6か月ぐらいかかります。

成年後見人として選任されるのは、弁護士や司法書士が多いですが、親族がなることもできます。ただ、高額の財産がある場合などは親族がなるケースを裁判所が制限しているのが現状です。

これは、過去に親族による着服が多かったことに起因します。

成年後見制度は、認知症などの意思能力・判断能力が低下した方の財産管理をすることで、本人さんが不自由なく生活することを目的とした制度です。したがって、本人さんの財産を投資して財産を本人さんのために増やそうとする行為はできません。マイナスになる可能性がある以上家庭裁判所はそのような契約は認めません。

2.家族信託の態様

そこで、家族信託という制度が最近ではよく利用されています。家族信託は成年後見と異なり家庭裁判所での手続きが必要なく個人間での契約となります。

信託契約で定めた本旨に従った行為であれば、受託者の判断で運用・処分ができることがメリットといえます。

家族信託が利用される背景としては、たとえば、父Aさんが将来認知症になっても自分の財産について様々な対応が柔軟にできるように息子のBさんに財産を管理・運用する権利を与えるというのが家族信託です。信託で登場するのは「委託者」「受託者」「受益者」です。

「委託者」は自分の財産についての法律行為を頼む側、すなわちAさんです。

「受託者」は、法律行為を頼まれる側、Bさんです。

「受益者」は、Bさんが行った法律行為の利益を受ける人です。通常は委託者と同一で契約することが多いでしょう。

たとえば、Aさんが預貯金の管理運用をBさんに委託した場合、その預貯金を使ってAさんの利益になるような行為をしたとします。その行為により利益が出た場合にはすべて受益者に帰属するというものです。

3.信託契約の締結方法

信託契約は通常公正証書で作成することが多いです。公証役場の手数料は、信託財産の額によって決まりますので、一概に言えませんがだいたい3万円から10万円を目安にしておくとよいでしょう。また信託契約の原案作成を司法書士や弁護士に依頼すると10万円前後の報酬がかかります。

4.家族信託を選択する主な目的とは

家族信託の一番の目的としては、自己が財産を所有し運用している場合などには上述のとおり、あらかじめ認知症になった時に備えて元気なうちに子などにその財産の運用を承継してもらうことができる点にあり、世代間のバトンタッチがスムースにいくことが挙げられます。

また、相続税対策や財産の運用をする中で現在の財産を売却し、新しい財産に買い替えることで利回りが良くなると判断すれば受託者の権限において、受益者のために実行することができます。

この点において、今ある財産を守るという目的を主眼に置く成年後見制度との大きな違いがあります。

5.まとめ

このように、例えば不動産賃貸経営を行っておられるような運用財産のある方には、家族信託を一度視野に入れた準備をされることもひとつの対策になってくるのではないかと考えます。

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