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民法改正で不動産賃貸業はこう変わる2  大家が修繕義務を負う場合・負わない場合

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民法改正で不動産賃貸業はこう変わる2  大家が修繕義務を負う場合・負わない場合

今回行われる民法改正で、建物の一部に損害が生じた場合、賃貸人(大家)が修繕義務を負う範囲やルールが明文化されました。また、損害により建物の一部が使えなくなったときの家賃の変更についても明確なルールが定められています。
今回は、大家がどこまで修繕義務を負うのか、建物の一部が使えなくなったら家賃はどうなるのかについて解説します。

1.原則として大家が修繕義務を負う

賃借人(借主)に使用収益させている建物は、もともと大家の所有物です。そのため、例えば雨漏りがしたり、給湯器が壊れてお風呂に入れなくなったりした場合には、大家にそれを修繕する義務があります。

建物の一部に問題があって修繕が必要となった場合、借主から依頼があれば大家は速やかに対応しなければなりません。もし大家が修繕を怠り、借主が自分で業者を手配して修繕を行った場合は、その費用を大家が負担することになります。

2.借主の責任で修繕が必要になった場合

原則として建物の修繕義務を負うのは大家ですが、その義務を免れる場合もあります。例えば、「借主が部屋でダンスの練習をしていて、床のあちこちが凹んだ」「借主が寝タバコをして、畳の一部が焦げてしまった」といった場合は、借主が自分で修繕を行わなければなりません。

以前は、このように借主の責任で生じた損害について、大家と借主のどちらが修繕義務を負うのか明文規定がなく、あいまいなままでした。しかし、今回の民法改正で、借主の責任で修繕が必要になった場合は、大家は責任を負わないと規定されました。

3.第三者の行為で修繕が必要になった場合

では、大家でも借主でもなく、第三者が建物に損害を生じさせた場合はどうなるでしょうか。

例えば、「近所に住む小学生がキャッチボールをしていて、そのボールが飛んできて窓ガラスが割れてしまった」というケースを考えてみましょう。窓ガラスを割ったのは大家でも借主でもないので、どちらにも責任はないように見えます。

改正民法のルールを見てみると、「賃貸人は修繕義務を負う。ただし、賃借人の責任で修繕が必要となった場合、賃貸人はその義務を負わない」旨が定められているのみで、第三者の責任については触れられていません。しかし、あくまで借主が責任を負うのは借主の責任で修繕の必要が生じた場合のみであり、第三者の責任で修繕の必要が生じた場合は大家が責任を負うことになる、と解釈されています。

そのため、修繕の必要が生じた場合は、どういう経緯で損害が生じたのかについて、大家は借主に詳しく説明をしてもらうようにしましょう。

4.建物の一部が破損した場合の家賃について

「裏山で土砂崩れが起き、土砂が部屋になだれ込んできて使えなくなった」「部屋の天井が崩れてきそうで危なくて部屋に入れなくなった」など、建物の一部が破損して使える状態ではなくなった場合、家賃はどうなるのでしょうか。

従来の民法では、賃借人の責任によらず建物の一部が使用できなくなった場合、賃借人は賃貸人に対して家賃の減額を「請求できる」と規定されていました。しかし、改正民法では、建物の一部が使用できなくなった時点から、家賃は「当然に減額される」とルールが変更されました。

そのため、民法改正後は、建物の一部に損害が生じた場合に、借主から一方的に家賃の減額を迫られることも考えられます。このとき、大家としてしなければならないのは、実際に現場を見て、その損害が借主の責任によって生じたものではないかどうかを十分に検討することです。借主から詳しく事情を聴き、よく確認しましょう。

ただし、破損した箇所が修繕されて再び使えるようになったら、家賃は元の金額に戻ります。ずっと家賃が減額されたままにはならないことに注意が必要です。

まとめ

  • 賃貸している建物に損害が生じた場合は、原則としてその所有者である大家に修繕義務がある。
  • 借主の責任で建物に損害が生じた場合、修繕義務を負うのは借主となり、大家は修繕義務を免れる。
  • 第三者の行為によって建物に損害が生じた場合は、借主ではなく大家が責任を負うことになる。
  • 借主の責任によらずに建物の一部が使えなくなった場合、改正民法ではその時点から家賃が当然に減額されるようになる。しかし、修繕が終わって再び使用できるようになれば、家賃は元に戻る。

今回の修繕義務に関する規定の明文化により、大家の側にやや厳しいルールが課されることになります。大家としては、生じた損害が本当に借主の責任でないか、借主が修理をして代金を請求した場合には、その金額が妥当なものであるかどうかをよく吟味することが必要になってくるでしょう。

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