税金・相続

相続後の節税対策  小規模宅地等の特例とは ~応用編~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
相続後の節税対策  小規模宅地等の特例とは ~応用編~

前回の「計算編」では、「小規模宅地等の特例」を適用すると土地の評価額がどれくらい下がるのか、実際に計算した結果を交えてお伝えしました。

今回は「応用編」として、具体的なケースを見ていきながら、「小規模宅地等の特例」が適用できるのかどうかについて解説します。

1.二世帯住宅に住んでいた場合

「父親が所有する土地に、二世帯住宅を建てて、両親と子の夫婦が暮らしている」というのは、よく見られるケースです。このケースで父親が亡くなった場合、登記の仕方ひとつで、「小規模宅地等の特例」適用の有無や、適用できる範囲が異なります。

1.共有登記されている場合

父と子で共有登記されている場合は、父が住んでいた家屋の敷地と子が住んでいる家屋の敷地の両方が「小規模宅地等の特例」の適用対象となり、両方とも相続税評価額を80%減額することができます。

2.区分登記されている場合

父と子、それぞれの居住スペースが区分登記されている場合は、父と子が生計を一にしているときのみ、子が住んでいる家屋の敷地に「小規模宅地等の特例」が適用できます。この場合、父が住んでいた土地は対象外となるため注意が必要です。

3.登記の仕方の見分け方

区分登記か共有登記かについては、固定資産税の納税通知書の送付の仕方でわかります。区分登記の場合は、それぞれの所有者に別々に納税通知書が送られてきますが、共有登記の場合は、共有する者のうち一人に納税通知書が送られてきます。また、区分登記されている二世帯住宅を同じ人が持っている場合は、納税通知書の欄の家屋番号が2つ以上あります。

このように、登記の仕方ひとつで、相続税評価額や相続税が大きく変わるので、特例の恩恵を受けたい場合は、早い段階で共有登記にしておくことをおすすめします。

2.被相続人が老人ホームに入っていた場合

老人ホーム等の施設で暮らしている被相続人が亡くなった場合でも、一定の条件を満たせば「小規模宅地等の特例」を適用することが可能です。その条件とは以下の通りです。

1.被相続人が要介護認定または要支援認定を受けている(施設に入るときに認定を受けていなくても、亡くなる直前に受けていれば適用可)。
2.都道府県知事へ届出済みの養護老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅などに入所している。
3.入所中、自宅を事業用、あるいは被相続人と生計を一にしていた親族以外の者の居住用にしていない。

重要な条件は上記の通りですが、実際には個別にさまざまなケースが出てきます。

例えば、被相続人が老人ホーム入居前に同居親族がいる場合と、いない場合とがあります。
同居親族がいる場合でも、ホーム入居後に引き続き生計一親族が居住した場合と、空き家になった場合、あるいは別の親族が入居した場合など、さまざまなケースがあるでしょう。これに、相続人が誰であるかという問題も関わって、適用の状況が異なってきます。
ここでは詳しく触れませんが、専門家や最寄りの税務職員などに相談して調べていただくことをおすすめします。

3.相続税申告期限までに事業を変更した場合

被相続人の所有する土地で被相続人が事業を営んでいた場合、その土地は特定事業用宅地として評価額を80%減額することができます。ただし、「小規模宅地等の特例」を適用するには、相続税の申告期限まで、その土地で相続人が事業を継続していることが条件です。

例えば、「被相続人が洋菓子店を営んでいたが、相続人が申告期限までに洋菓子の製造販売をやめてその土地でレストランを始めた」というケースを考えてみましょう。この場合、洋菓子の製造販売の事業が継続されていないとみなされ、特例の対象外となります。

しかし、洋菓子の製造販売業から、洋菓子の製造販売もするカフェへ転業したケースでは、洋菓子の製造販売業はそのまま継続しているので、特例の適用対象となります。

まとめ

  • 被相続人と二世帯住宅に住んでいる場合、土地を共有登記しておくと、その土地すべてが「小規模宅地等の特例」の対象となる。一方、区分登記の場合は、相続人の所有する土地の部分しか特例が適用されない。
  • 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合、要介護もしくは要支援の認定を受けていることや、都道府県知事に届出済の施設に入っていること、自宅を賃貸や事業に使用していないことが特例適用の要件となる。
  • 特定事業用宅地の場合、相続人が相続税の申告期限までに転業してしまうと、場合によっては特例を受けられなくなるため注意が必要。

「小規模宅地等の特例」は、適用できるケースが非常に限られており、適用条件がひとつ足りないだけで、納めるべき相続税が大きく変わってくるケースもあります。特例の適用を受けたい場合は、相続が発生する前に税理士などの専門家に相談して、適用条件について確認しておくのが得策と言えるでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

メールアドレス登録受付中!

賃貸経営ガイドでは、不動産オーナーの方・不動産オーナーになりたい方に役立つ情報をお届けしていきます。
メールアドレスをご登録いただくと、最新の情報や人気の記事などをメールで受け取ることができます。

メールアドレスを登録する

この記事が気に入ったら 「いいね!」をして最新記事をSNSで購読して下さい。

大家CLOUDをフォロー