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民法改正で不動産賃貸業はこう変わる1  個人保証人の極度額設定が義務に

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民法改正で不動産賃貸業はこう変わる①  個人保証人の極度額設定が義務に

不動産賃貸業が関わる法律に、民法があります。民法は明治時代に制定され、不動産賃貸業と主に関連する債権法の分野において、これまで大きく改正されたことは一度もありませんでした。しかし2017年5月、その債権法の分野が全面的に改正されることになりました。

今回から、シリーズ「民法改正で不動産賃貸業はこう変わる」と称して、民法改正に伴って不動産賃貸業はどう変わっていくのか、複数回にわたり解説していきたいと思います。

第一回目は、賃貸借契約時に個人が保証人となる場合の「極度額」が定められたことについてお話します。

1.個人保証人の極度額の設定が義務化

物件の賃貸借契約書を交わすときには、家賃滞納に備えて、賃借人に保証人あるいは保証会社を指定してもらうことが一般的です。今回の民法改正では、賃借人の親やきょうだいなどの個人が保証人になる場合、保証契約で保証金額の上限(極度額)を設定する規定が設けられました。

その目的として、個人保証人の保護があります。従来の法律では、保証人が負担すべき上限金額に関する法律上の規定はなく、どこまで保証すればよいのか、あいまいな点が問題でした。賃借人が膨大な金額の家賃を滞納したために、保証人がそれを全額肩代わりすることになったケースも少なくありません。

そのため、保証人を依頼された個人が、自分が保証すべき最大金額を十分に認識した上で、保証人を引き受けるかどうか慎重に判断してほしいとの狙いから、今回、個人保証人との保証契約において保証金額の上限を設定する取り決めができたのです。

改正民法のもとでは、個人を保証人とする場合、極度額を書面等で定めなければその保証契約は無効であると定められました。ただし、形式は書面でなくても、電磁的記録(CDやハードディスク等の記録媒体での記録)でもよいとされています。

2.極度額の決定方法や上限に規定はない

保証金の極度額の設定が義務付けられたとはいえ、具体的な金額の決定方法や上限額について、法律上の定めはありません。そのため、個人と保証契約を結ぶ際には、家賃の金額や保証人となる個人の資産・経済状況などに照らして個別に判断し、極度額を定めることになります。

ただし、極度額は固定された金額であることが重要です。「100万円」と具体的な数字を決めてもよいですし、「家賃の1年分」としても問題ありません。ただし、家賃はそのときの周辺の家賃相場によって多少変動する可能性もあるので、「賃貸借契約開始時の家賃○年分(もしくは○か月分)」と定めることが重要です。

3.高額すぎる極度額では無効となるケースも

大家の立場からすれば、「賃貸借契約を結ぶたびに個別に保証金額の極度額を設定するのは面倒」、また、「将来的にどんな損害が発生するかわからないから金額を高めに設定したい」との思いから「極度額1億円」などと一律で契約書に記載したくなるかもしれません。

しかし、賃貸借契約を結ぶ物件の家賃などから考えて、明らかに極度額が高すぎる場合は、保証契約が無効となることがあります。

たとえば、築年数が古い家賃7万円の木造アパートの部屋を貸すときに、保証契約で「極度額10億円」と定めるケースを考えてみましょう。このケースでは、公序良俗に反するため無効になると考えられ、実質的に保証契約で保証金額を定めないことと同じであると解釈されます。

「保証契約が無効になっても、何かあった場合に多少は賃借人の滞納した家賃や費用を保証人に肩代わりしてもらえるだろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、保証契約が無効になれば、大家側は保証人に1円も請求できなくなります。

改正民法の考え方では、極度額を定めなければ保証契約は無効であり、極度額の定めが無効となれば初めから極度額が設定されなかったものとみなされます。そのため、極度額を定める際には、慎重に検討した上で具体的な金額を設定する必要があるでしょう。

まとめ

  • 賃貸借契約を結ぶ際に、個人が保証人となる場合、保証契約で上限金額(極度額)を定めなければならない。
  • 極度額を定める際には、例えば「100万円」、あるいは「賃貸借契約開始時家賃の○年分(○か月分)」など、固定された金額にする必要がある。
  • ただし、設定した金額があまりに高すぎる場合、極度額が無効とされ、保証契約自体も無効になる可能性があるので、極度額を定める際には十分注意する。

大家さんからすれば、保証してもらえる金額の上限を定めるのは多少リスクを伴うことかもしれません。そのため、極度額を定める際には、大家・賃借人・保証人の三者が十分に納得できる金額にすることが大切です。

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