自主管理

大切な不動産を守る火災保険 入居者に説明する時のポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
大切な不動産を守る火災保険 入居者に説明する時のポイント

日本の火災保険の加入率は85%を超え、多くの人にとって火災保険は必要なものと認識されています。不動産の購入とほぼ同時に加入されることも多いです。
しかしその反面、保険料や保険内容などについて十分に理解しないまま加入する人も多いように思われます。「困ったことがあれば保険屋さんに聞けばいい」と思っている場合は、注意が必要です。
火災保険の保証範囲は、予想以上に広範囲に及ぶ上に、保険金は保険契約者が請求しなければ受け取ることができません。そのため、オーナーは自身の財産である不動産が損害を受けた場合に、速やかに保険金の請求ができるよう、保険内容について把握しておき、保険契約者である入居者にもしっかりと理解しておいてもらう必要があります。
今回は、一般的に火災保険で保証される内容について、ご紹介したいと思います。

1.なぜ火災保険へ加入するのか?

通常、他者の財産に損害を与えた場合、損害を与えた人がその損害を賠償する責任を負います。しかし「火災によって」他者の財産に損害を与えた場合は、寝タバコや火のついたストーブに直接給油をしたなどの重大な過失がない限り、「失火責任法」により、火災を起こした人に損害を賠償する責任はありません。

これは一見、火事を起こした人に対して甘い法律のように思われますが、木造住宅が多い日本の住宅事情では延焼によって被害額が大きくなりやすく、たとえ賠償を求めても個人の資力では賠償しきれないことが多いと予想されるためです。

こうした背景から、火災で被害を受けた場合に備えておく必要があるのですが、現実的には火災の残存物を片付けて住宅を再建する費用は簡単に用意できるものではありません。
そこで、少ない費用で大きな保証を受けることができる「火災保険」への加入が必要となってくるのです。

2.賃貸住宅の場合の火災保険

賃貸住宅に居住している場合も、火災保険に加入する必要があります。
先述の失火責任法によると、火災が起こっても入居者に重過失がない限り賠償する必要がないので、火災保険の加入も必要ないと思われるかもしれません。

しかし、貸主と借主の間で交わす賃貸契約には「原状回復義務」があり、入居者はこれを免れることはできません。現実的には、火災で損傷してしまった建物を入居者の資力で原状回復することは難しく、そうなってしまうとオーナーは安心して建物を提供することができません。
そこで、原状回復を保証するような、火災保険への加入が入居者にとって必要となってくるのです。賃貸契約時に「借家人責任賠償保険(特約)」と併せて契約することが一般的です。

3.火災保険の保証範囲とは

火災保険は「火災」と名が付くため、火災のみを保証してくれるものと思われがちですが、実は建物に対して生じうる多くの災害が保証範囲とされています。

火災保険の一般的な保証範囲として、次のようなものが挙げられます。

  • 火災への保証:火災のほか、落雷や破裂・爆発による建物・家財への損害を補償。
  • 風害への保証:台風などの強風による建物・家財への損害を補償。
  • 水害への保証:浸水や土砂崩れなどによる建物・家財への損害を補償。
  • 水漏への保証:水道管や排水管の故障による階下の建物・家財への損害を補償。
  • 盗難への保証:盗難に伴う建物への損害や盗まれた家財の損害を補償。
  • 破損への保証:不慮の事故による建物・家財への損害を補償。
  • このように、火災だけでなく、近年激しさを増す風水害も保証範囲となっています。上記の中でも、意外に知られていないのが破損への保証です。これは、例えば引っ越しの際に、窓ガラスを割ってしまったり、子どもがテレビなどの高額な家財を破損してしまった場合に保険金を受け取ることができるなど、子育て世代にはうれしい保証と言えます。

    4.さまざまな特約や割引制度

    火災保険は、上記の主契約以外にも、特約によって保証範囲を拡大させることができます。

    例えば、「類焼損害補償特約」などが代表例です。
    日本では火災保険の契約件数は85%程度と高い比率ですが、それでも100%でない以上、火災が起こった場合に保証を受けられない世帯が出てきます。火元となった世帯には、重過失がない限り法的な賠償責任はないものの、被害にあって保証を受けることができなかった世帯と、その後良好な関係を維持するのは難しくなってしまうでしょう。こうした火災保険未加入世帯にも火災保険と同様の補償を行うことができるのがこの特約です。

    また、火災保険の割引制度として、ガスを使用せずオール電化にした場合や、タバコを吸わない世帯向けに、タバコに起因した火災を補償しない代わりにノンスモーカー割引などがあります。割引制度は申請しないと適用してもらえない場合もありますので、利用できる割引制度が
    あれば、自分から問い合わせをするなどの対策が必要です。

    まとめ

    • 日本では、火災を起こした人に重大な過失がない限り「失火責任法」が適用され、損害を賠償する責任はない。そのため、被害に遭った時に備えて、火災保険に加入しておく必要がある。
    • 賃貸住宅で火災が起こった場合、入居者は大家に対して「原状回復義務」がある。実際には、保険の補償がないと難しいので、不動産を守るために入居者へ火災保険の加入を義務付けるべき。
    • 火災保険の保証範囲は、火災のみならず多岐にわたるので、保険金が受け取れるケースを知っておき、しっかりと補償を受けることが大事。
    • 火災保険には特約や割引制度もあるので、知識を身に付けて適切に使用すると無駄がない。

    不動産のオーナーは入居者に正しい理解を促し、火災などの大きな損害を受けた際にしっかりとした補償を受けられるようにすることが何より大切です。また、火災以外にも補償されるケースがあることを知っていただき、ご自身の身を守る助けになれれば幸いです。

    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    メールアドレス登録受付中!

    賃貸経営ガイドでは、不動産オーナーの方・不動産オーナーになりたい方に役立つ情報をお届けしていきます。
    メールアドレスをご登録いただくと、最新の情報や人気の記事などをメールで受け取ることができます。

    メールアドレスを登録する

    この記事が気に入ったら 「いいね!」をして最新記事をSNSで購読して下さい。

    大家CLOUDをフォロー