法律

利用すれば相続税対策に!? 土地信託のメリットとデメリット

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平成25年に相続税法が改正され、相続税の基礎控除額が大幅に縮小されたことから、相続税の対象者が大幅に増加しました。そのため、土地建物を所有する方の中には、相続税の節税対策に奔走している方も多いのではないでしょうか。
今回は、相続税対策のひとつである「土地信託」を紹介するとともに、そのメリット・デメリットについても考えていきたいと思います。

1.土地信託とはどういう制度なのか

土地信託とは、信託銀行や信託会社(以下「信託銀行等」)に土地所有者が持っている土地を預けて、代わりに運用してもらうことを言います。具体的には、信託銀行等が資金調達をして、所有者から預かった土地の上にマンションやアパートを建てて経営することを指します。

資金調達から設計事務所・建設会社との打ち合わせ、入居者の募集など、面倒な手続きや折衝ごとをすべて信託銀行等が代行してくれるのが、土地信託という制度なのです。

2.土地信託の流れ

土地信託の流れは、一般的に次のようになります。

1. 土地所有者と信託銀行等との間で信託契約を結び、土地を信託します。土地所有者は「受益者」として信託受益権を取得することになります。

2. 信託銀行等は設計事務所や建設会社と設計や建物の建築を依頼します。同時に、信託銀行等が必要な資金を金融機関から借り入れます。

3. 信託銀行等は設計事務所や建設会社に代金を支払って建物の引き渡しを受け、その後管理・運営を行います。

4. 信託銀行等は入居者やテナントを募集し、得られた賃料収入の中から借入金の返済や税金などの経費を支払います。

5. 賃料収入から諸経費と信託報酬を差し引いた額を信託配当として、信託銀行等が土地所有者に支払います。

6. 信託期間終了後は、信託銀行等から土地所有者へ建物とともに土地が返還されます。このとき、すでに土地所有者が亡くなっている場合は、相続人に返還されることになります。

3.土地信託のメリット

土地信託は、信託銀行等が土地所有者の代わりに土地を運用してくれることが第一のメリットです。土地所有者に賃貸経営の知識がない場合や、他に本業を持っていて賃貸経営に時間を割くことができない場合、信託銀行等に任せておけばすべて代行してくれるので安心です。また、資金の借り入れ時の名義人は信託銀行等になるので、ローンの審査に通るかどうかの心配も不要です。
また、土地信託をすれば相続税対策にもなります。土地のままで置いておくよりも、貸マンションや貸アパートを建てた「貸家建付地」としておくほうが相続財産としての評価額が下がるからです。

たとえば、土地の評価額が1億円、借地権割合が70%(借家権割合が30%)の地域とすると、土地の相続税評価額は、以下になります。

1億円× ( 1 – 70% × 30% ) = 7,900万円

また、建物自体も相続財産となりますが、建物の相続税評価額は建築費用の約60%、その建物がマンションやアパートなどの貸家の場合は自用家屋の70%で評価されます。
例えば、建築費用に1億円かかったとすると、貸家の評価額は、以下になります。

1億円 × 60% × 70% = 4,200万円

また、運用は信託銀行等が行っていても土地建物の名義人は土地所有者です。そのため、借入金は不動産取得のための経費として計上できますし、相続が始まったときには土地建物は相続財産、借入金は負債としてカウントされます。その結果、相続財産を減らして相続税を節約することが可能となるのです。

4.土地信託のデメリット

土地信託のデメリットは、必ずしも収益を生み出せるとは限らない点です。信託銀行等が入居者やテナントを募集しても、実際に入居者がいなければ賃料収入は入ってきません。そうすると、運用がうまくいかずトータルでみると赤字経営になる可能性もあります。
また、土地を信託していても、土地所有者がその土地の名義人であることに変わりはないため、土地所有者には、固定資産税や都市計画税、不動産所得に対する所得税、信託登記の登録免許税などの税金が課されます。また、相続が発生した際には相続税もかかってきます。
さらに、土地信託では長期にわたる土地の運用が想定されているので、信託期間が10年から30年と長期に及び、この間、途中で解約することは原則としてできません。信託期間の途中で土地を手放す可能性のある場合には、土地信託は不向きであると言えるでしょう。

まとめ

  • 土地信託とは、土地所有者に代わって信託銀行等が、その土地にマンションやアパートを建て、賃貸経営事業まで担ってくれる制度である。
  • 土地信託のメリットは、信託銀行等がすべて土地建物の運用・管理を行うため、面倒な手続きが必要ないこと、賃貸経営の知識が不要であること、何もせずに配当が受け取れること、相続税対策にもなることが挙げられる。
  • 土地信託のデメリットは、必ずしも多額の賃料収入が得られるとは限らないためトータルで収支がマイナスになる可能性があること、さまざまな税金がかかってくること、信託期間中は解約できないことがある。

土地信託は面倒な手間ひまをかけることなく、土地を有効に活用できる点が大きな魅力です。しかし、実際に利用する際には、メリットとデメリットをよく比較検討して、自分にとって利益が出るかどうかを慎重に見極める必要があると言えるでしょう。

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