法律

借地権付きの物件を賃貸に出すときに地主の許可は必要?

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借地権付きの物件を賃貸に出すときに地主の許可は必要?

近年、住宅の購入を検討している人の間で定期借地権付きの物件が人気です。土地が通常の所有権の物件では、都心の一等地などではかなりの高額になるので、一般のサラリーマンにはなかなか手が出せません。
一方、定期借地権付きの物件は土地が所有権の物件に比べて割安で手に入れることができます。そのため、定期借地権付きの物件に今注目が集まっているのです。
では、購入した定期借地権付き物件を何らかの事情で賃貸に出す場合、地主の許可は必要になるのでしょうか。

1.借地権は大きく5種類に分けられる

ひと口に「借地権」といっても、借地権には大きく分けて以下の5種類があります。

    1.旧借地法上の借地権
    2.定期借地権
    3.事業用定期借地権
    4.建物譲渡特約付借地権
    5.一時使用目的の借地権

このうち、近年よく見られるようになったのが、2の定期借地権付きの住宅です。定期借地権とは、通常50年とされている契約期間の満了時には、建物を撤去して更地に戻して地主に返還しなければならないという条件が付いた借地権のことを言います。定期借地契約は期間の延長や更新が認められておらず、なおかつ借地人から地主への立ち退き料の請求もできないとされています。
定期借地権付きの物件はこのような制限があるため、同じ条件であれば通常の物件よりも安価に購入することができます。その分、余剰資金でワンランク上の家具を購入するなど、ほかの用途に使うことができて一石二鳥です。
しかし、せっかく物件を購入しても転勤などのために引っ越さなくてはならない場合もあります。そのときに、誰かほかの人に物件を賃貸しようと考える人も少なくありません。では、定期借地権付きの物件を第三者に賃貸するときには、地主の許可は必要なのでしょうか。

2.建物を賃貸するのに地主の許可は?

民法上では、借地人は地主の許可なく借地権を第三者に転貸・譲渡することは禁じられています。土地の賃貸借契約は、地主と借地人の信頼関係に基づいて結ばれているものであり、そこに第三者が介入することは想定されていないからです。しかし、これは当該土地に関する契約上の問題であり、土地の上に建つ建物に関しては土地の賃貸借契約とは別物であると考えられています。
古い判例にはなりますが、昭和8年12月の大審院の判決によれば、借地上の建物を賃貸することは民法612条でいう「無断転貸」には該当しないとされています(大判昭和8年12月11日)。その理由とは、地主が借地人に対して土地の上に建物を建てるという形で土地を利用することを認めている以上、借地人がその建物をどのように使用しても自由であると考えられているからです。
その一方で、地主と借地人との契約の中で、「借地人が第三者に建物を賃貸する場合には地主の承認を得ること」といった特約を結ぶことも有効であるとされています。
では、実際に借地人が建物を第三者に賃貸する際に、この特約に基づいて地主が建物の賃貸を承認しなかった場合はどうなるのでしょうか。この場合、借地人は借地借家法の規定に基づき、裁判所に対して借地条件の変更許可を申し立て、地主の意思に関係なく第三者に建物を賃貸できることになっています。
したがって、借地人が自らの所有する建物を第三者に使用させることは問題ない、との考え方が現在では一般的になっています。
しかし、地主との円滑な人間関係を維持するためにも、賃貸する際は事前にその旨を知らせておいたほうがよいでしょう。そうすることで、住人の変更によって生じうるトラブルの防止にもつながります。

3.物件を賃貸に出すときの注意点

借家契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」の2種類があります。
定期借家とは、一定の契約期間を経過すると借家契約が終了するものですが、貸主と借主が合意をすれば「再契約」という形で契約を存続させることができます。
一方、普通借家とは、期限の定めのない借家契約で、借主から住み続けたいとの希望がある限り、貸主側から一方的に契約を破棄したり更新を拒絶することはできなくなっているものです。
定期借地権付き物件を賃貸に出すときには、可能であれば後々トラブルが生じるリスクを回避するために定期借家契約にしておいたほうが望ましいでしょう。普通借家契約では借家契約を更新することが前提となっているため、普通借家契約の形をとるのであれば、別途特約で定期借地契約の契約期間満了をもって建物の賃貸借契約も終了する旨を記載することが必要です。
契約書での記載例は以下の通りです。
「第○条 本件建物は、平成○年○月○日付締結の貸主、土地所有者間の一般定期借地契約の定めにより、平成○年○月○日までに取り壊すことになっているので、本契約の期間は、平成○年○月○日から○年間とし、その後の更新においても、その期限を最長平成○年○月○日までとし、その後は更新がなく、同期間の満了により終了するものとする。」

引用元はこちら→公益財団法人 不動産流通推進センター「定期借地権付住宅の賃貸借の媒介」

まとめ

  • 借地権には5種類あるが、現在売りに出されているのは「定期借地権」付きの物件が多い。
  • 定期借地権付き物件は、土地が所有権の物件に比べて割安で手に入るため人気が出ている。
  • 何らかの事情で定期借地権付き物件を賃貸に出す場合は、原則として地主の許可は不要だが、後々のトラブルを防ぐためにも連絡を入れておくのが望ましい。
  • 賃貸に出す際に普通借家契約を結ぶ場合、定期借地権の契約満了時をもって借家契約も終了する旨を契約書に明記する。

定期借地権付き物件を第三者に賃貸する場合、地主の許可は原則として不要です。しかし、地主との円滑な人間関係を維持するためにも、土地建物の状況が変わるときにはきちんと連絡を入れることが大切と言えるでしょう。

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