私は普通に会社勤めをしており、特別な資産がある訳でもなかったのですが、自分自身の裁量で不動産投資をしてみたいという気持ちがありました。そこで、働いて貯めた貯金(500万円)で区分マンションに投資を始めました。
物件の取得から、引き渡し、売却まで私の体験をお話します。
1.半年かけてリサーチ後 【物件取得】
1-1.自己資金で購入可能な物件に絞る
不動産投資を始めるにあたり、まず最初に検討したのは、一棟アパートや一棟マンション、もしくは築浅で競合力のある区分マンション、または築古の区分マンションのいずれを購入するかです。
もともとの自己資金が500万円だったので、築古マンション以外を検討する場合は、借り入れが必要になります。先々を考えて、借入金無しで買える物件に絞って検討を進めました。漠然と、借入金による投資が怖いという気持ちが強かったと思います。
1-2.半年かけて情報収集と現地見学
まずは、書籍、インターネット、セミナーなどでいろいろな情報を集め、週末に物件を見に行く生活を半年ほど続けました。
勤務先が不動産を取り扱う会社なので、別の業界の方に比べると、不動産情報に触れる機会は多いかと思います。ですが、自分個人での名前で、特別優れた物件や、マル秘の上流物件の紹介をしてもらえるはずもなく、なかなか物件を決められず、何とも煮え切らない半年間でした。
そんな状況ではありましたが、実際に物件を見に行き、周辺環境を見て、周辺業者の賃貸情報をヒアリングするうち、徐々に、検討したい物件と、逆に高利回りでも検討しない物件が少しずつ絞られてきました。
1-3.希望エリアが決まり、物件購入へ
ご参考までに、私の条件は以下のようなものでした。
- 検討したい物件(エリア):
- 検討不可の物件(エリア):
自分の土地勘があるエリア、対抗物件が多くないがターミナル駅から近いエリア、駅から一番近い物件、20㎡以上の物件
ターミナル駅へのアクセスは良いものの対抗物件が多すぎるエリア、1階物件
具体的な地名は出しませんが、単身者向け賃貸供給が多くなり、明らかに空室が多すぎるエリアもあります。築年も20~25年を迎える区分投資用物件が多くなり、新規賃貸募集時の条件を見ても、物件取得後、賃貸管理会社へ賃貸委託することを前提としていた私には検討が難しいと思いました。
マンスリーのノウハウがある方、周辺企業(専門学校など)の寮としての誘致が可能な場合、将来の出口を見据えて同マンション内で区分を買い進める方、その他のアイデアがある方にとっては、別の見方もあるでしょう。
ここからさらに半年、ちょうど物件を探し始めてから1年が経過するころ、川崎市内の私鉄沿線で区分マンションを購入する事ができました。
2.周辺物件との競合力も考えた【購入物件】
購入した物件は、川崎市内の私鉄沿線となる最寄駅から徒歩7分の立地でした。
1988年築、鉄筋コンクリート造建物の2階部分の一般的なワンルームマンションでした(2012年11月取得時に築24年目)。
その駅の周辺は土地勘もあり、都心への通勤圏であることに加え、横浜駅、川崎駅へアクセス良好なので、検討したいエリアでした。築年相応の設備(電気コンロ、3点ユニットバス)ではありましたが、室内洗濯機置き場が設置されていました。取得物件よりも駅に近い場所にある単身者向けのマンションは、築年が古く(30年超)、総戸数15戸前後、室内洗濯機置き場がない物件でした。そのため、新規賃貸検討客が比較検討した場合にも、十分に競合力はあると判断しました。
物件価格は430万円、月額47,000円(共益費込)で賃貸中でした。
表面利回り約13%となり、そのエリアの他物件より、少し高い利回りの物件でした。
オーナーチェンジでの購入となり、賃借人は引き継ぎとなります。契約者は68歳男性(年金収入とパート収入)、保証人が実兄(70歳)。賃借人属性を見ると、賃貸人によってはお断りするケースもあると思われ、他物件よりも若干利回りが高い理由も納得でき、また、自分の中でも許容できるものでした。
3.【引き渡し】と【管理会社探し】
3-1.購入時の価格交渉から契約まで
売却希望価格は当初450万円でしたが、値段交渉も行いました。
入居者が高齢であること、物件取得決済は現金で行うことを説明して、400万円での購入意思表示をした後に、何度かやり取りがあり、430万円での合意となりました。
その後、決済日および契約書調印は約2週間後に一括して行うこととし、契約関係書類と付属資料資料を受領しました。
売買業者から賃貸管理契約書類を受領する際に、入居者の実兄が保証人であると説明を受けていましたが、契約書を見ると実兄は保証人ではなく、緊急連絡先として署名捺印されていました。
その後の確認により、実兄の立場としては賃貸借契約上は緊急連絡先として、家賃保証契約上は連帯保証人となっていることがわかり、家賃保証会社の契約については所有者変更時に賃貸借契約状の賃貸人の地位も継承されることの確認も取れました。
売主は賃貸を自主管理しており、さらに入居者が高齢のこともあって、賃貸契約関係の引き継ぎについては気を遣いました。
3-2.管理会社は地元に絞って検討
まずは、決済日に向けて、賃貸管理会社を決めなくてはなりません。あまり時間のない中、現地調査時に訪問した周辺業者を中心に検討しました。
沿線の大手仲介業者は、集客力があり、賃貸契約管理のほか解約時の新規募集の際にも期待できると思いました。管理戸数が多く、緊急時の対応などもシステム化されている点でも魅力的でした。
しかし、結果として私は、物件近くの地場の不動産業者へ管理を依頼をすることにしました。
高齢者社といわれる現在ですが、自分にとって68歳は高齢だと思います。オーナーチェンジ後は、大手仲介業社のシステム化された管理よりは、物件に目の届きやすい地場の業者に任せたいと思い、家賃についても持参してもらうほうが良いと思いました。
3-3.難航の末、出会えた地元業者
そのように考えて地元仲介業者を訪問し、物件取得予定で、賃貸管理をお願いしたいことを伝えましたが、なかなかうまくいきません。他社が客付けした契約者の管理を、契約期間中に月々数%の手数料で受けることは、地場業者にとってもメリットの少ないことは、予想できていました。
そんな状況の中、今後投資用の所有物件を周辺で増やしていくつもりがあること、つまり売買物件の紹介もして欲しいこと、家賃の集金代行も含めてすべて業者に任せて言い値の手数料を払うことなどを説明して、なんとか管理を受けてくれる業者に出会うことができました。手数料は月々10,000円程度請求されることも考えましたが、実際には相場の5%で受けてくれました。
若い担当者で親身に話を聞いてくれ、良い方に出会えたと思います。今でも、近くに行った際には顔を出し、情報交換も含めて良いお付き合いが続いています。
4.【賃貸引き継ぎ】の流れ
4-1.同行を希望して入居者を訪問
物件の引き渡しが終わり、売買業者と管理会社の担当に、賃貸契約者へ提出する「賃貸人変更通知」を作成してもらいました。そして、通知方法を打ち合せして、管理会社の担当者と私が同行して、賃借人の自宅(購入物件)にあいさつを兼ねて訪問することにしました。
契約者がどんな方なのか興味もあり、管理会社に依頼した後は会う機会もないので、一度会ってみたかったのです。現地に一緒に行きたいと私から提案し、快諾してもらいました。
お会いすると、非常に元気な方でした。売買により賃貸人が変更となったこと、それにより次回以降の賃料振込先が変更となること、設備等のトラブルがあった場合の連絡先が変わることなどを理解していただきました。
4-2.家賃の支払日などの相談
また、お話をする中で新しい発見もありました。パートの勤務はやめており、現在は年金と生活保護の収入で生活していることがわかりました。
賃貸借契約上の約定としては賃料支払日は月末に翌月分支払いとなっていますが、毎月5日前後に役所で生活保護を受領しているとのことで、受領後5日までに支払ってくれれば良いこと、支払い方法としては賃貸管理業者へ持参してほしいことを伝えました。
また、賃貸借契約書は条件変更なく、契約期間も据え置きで、新しい賃貸管理会社書式のもので再度締結したいことなど、当初管理会社と打ち合わせしていた提案についても、承諾していただけました。
家賃の持参については、管理業者側にも賃料を持参で支払う顧客がおり、毎月一回でも賃借人の状況がわかるからと快く協力してくれました。
5.購入物件のその後【売却と収支】
購入から約2年半後に物件を売却し、次のような結果となりました。
物件取得時には430万円で購入(仲介手数料、取得税等諸経費込みで約460万円)。
2014年6月に、450万円で売却し、仲介手数料など支払いし、手取りは約430万円。30カ月所有し、賃料などによる収支は+約90万円となりました。
※賃料収入から管理修繕金を差し引き、年間固都税と所得税を支払った後の収支。
結果として、460万円の投資に対して、2年半でキャッシュ約60万円を得ました。表面利回り12%を超える物件を探し、物件を購入売却した後のキャッシュでの年利約5.1%の投資となりました。
今回の投資の結果は、利回りは別として、個人的には満足のいくものでした。
6.はじめての不動産購入を振り返って
今回は、初めての自己資金での不動産投資ということもあり、収支結果は別として、まずは物件を購入し、出口として売却するという行動を取れたことが良かったと思っています。
マーケット状況による売買時の価格、所有期間中の賃貸状況による賃料収入、所有期間や維持管理に伴う経費による課税内容などもいろいろと勉強になりました。
昨今のマーケットを見ると、もう少し所有し続けてから売却していたら、当時の売却価格よりも高く売れる可能性もあったと思います。また、売却時における譲渡所得税も、より有利になった可能性もあります。ただし、賃貸契約が継続し続けるかはわかりませんし、改修に関する費用も発生したかもしれません。
今回は手持ち資金での投資となり、借入金による取得の場合は、また違った発見もあるかと思います。売却後には、次の物件は無理のない範囲内で融資を受けた物件取得をしたいと考え始めました。
この記事が、不動産投資を始めたいと考えている方の参考になれば幸いです。