住み替えなどの理由で、空き家の所有者となる方の多くは、安定した家賃収入が見込める場合は、売却せずに賃貸したいと考えていらっしゃるようです。
一方、適切な管理が行われていない空き家は「防犯・防災・衛生・景観」など、環境面で地域の大きな問題となっています。空き家を有効活用することにより、貸し主は安定した家賃収入が得られ、人が住むことによって治安が守られ、地域活性化にもつながります。
しかし、リフォームにお金がかかるのでは?というのが最大の懸念になります。それを解決するのが「借り主負担DIY型」という、新しい賃貸のスタイルです。今回は「空き家の活用法 続編」と題して、空き家を活用する時に知っていれば得する「借り主負担DIY型」賃貸について説明します。
1.借り主負担DIY型―貸す側・借りる側のメリット
1-1.貸し主は修繕費やメンテナンスが不要
「借り主負担DIY型」とは、空き家を賃貸する場合、今まではリフォーム渡しが通例でしたが、借り主がリフォーム(DIY)をする方法です。リフォームして賃貸する場合は、貸し主の側で修繕費などの負担が必要でしたが、この場合は費用を捻出する必要がありません。したがって、修繕費を節約できるメリットがあります。
さらに、所有者にとって大きなメリットとなるのが、「メンテナンスの必要がなくなる」という点です。賃料を低く設定するため、大きな収益とはなりませんが、メンテナンスの負担は軽減されます。
1-2.借り主は原状回復の必要がない
新築や中古の物件を購入し、好みの間取り・広さの住宅を手に入れたい、自由にリフォームしたいなど、リノベーションを希望する人が増えています。さらに、購入資金を工面する必要がなく、好きな時に住み替えができる「賃貸」には、一定のニーズがあります。
一方で、DIYをするに当たって心配なことは「原状回復工事」という声が多いのですが、「借り主負担DIY型」にはその必要性がないので、今後さらにニーズが高くなることが予想されます。
2.国土交通省の賃貸活用ガイドブック
国土交通省住宅局住宅総合整備課では「個人住宅の賃貸活用ガイドブック」を発行し、空き家を活用する工夫を紹介しています。ここでは、通常の賃貸借の方法に加えて、新しいやり方として「借り主負担DIY型」も提案しています。以下は、それを要約して紹介するものです。
2-1.従来の賃貸住宅のタイプ
今までのやり方の賃貸住宅では、貸し主は、借り主の入居前に修繕、設備更新などを実施するのが一般的でした。「Aタイプ(一般型)」と「Bタイプ(事業者借上型)」の2タイプがあります。
<Aタイプ・一般型>
- 入居前修繕 貸し主が修繕、設備更新などを実施
- 家賃水準 市場相場並み
- 入居中修繕 貸し主が実施(一部小修繕は借り主負担もある)
- DIYの実施 原則禁止
- 造作買取請求 認めない(造作した場合、退去時に撤去)
- 退去時の原状回復 借り主の義務(通常消耗、経年劣化を除く)
<Bタイプ・事業者借上型(サブリース)>
- 入居前修繕 貸し主が修繕、設備更新などを実施(一定水準以上)
- 家賃水準 市場相場並み(手数料支払い)
- 入居中修繕 事業主が実施(貸し主と負担調整)
- DIYの実施 原則禁止
- 造作買取請求 認めない(残置するかは双方で協議)
- 退去時の原状回復 借り主の義務(通常消耗、経年劣化を除く)
2-2.新しいスタイル「DIY型賃貸住宅」について
新しいやり方のDIY型賃貸住宅は、「C-1タイプ(借り主負担DIY・現状有姿)」と「C-2タイプ(借り主負担DIY・一部要修繕)」の2タイプがあります。
<C-1タイプ・借り主負担DIY(現状有姿)>
- 入居前修繕 現状のまま(故障はなく、通常生活は可能な状態)
- 家賃水準 市場相場より若干低廉
- 入居中修繕 借り主が実施またはそのまま放置(躯体などは貸し主)
- DIYの実施 借り主負担で認める
- 造作買取請求 認めない(残置するかは双方で協議)
- 退去時の原状回復 DIY実施箇所は免除
<C-2タイプ・借り主負担DIY(一部要修繕)>
- 入居前修繕 現状のまま(故障はなく、通常生活は可能な状態)
- 家賃水準 市場相場より相当低廉
- 入居中修繕 借り主が実施またはそのまま放置(躯体などは貸し主)
- DIYの実施 借り主負担で認める
- 造作買取請求 認めない(残置するかは双方で協議)
- 退去時の原状回復 DIY実施箇所は免除
まとめ
「借り主負担DIY型」賃貸のメリット
<貸し主のメリット>
- 通常の生活ができる状態であれば、現状のまま貸すことが可能で、修繕費やメンテナンスが必要ない。
- 借り主が自費でDIYなどを行うため、長期間住んでくれる可能性がある。
- 退去時には、入居時よりも設備などの価値が上がる可能性も考えられる。
<借り主のメリット>
- 賃貸住宅でありながら、持ち家のように自分の好みにDIYできる。
- 自費でDIYを実施するため、安い家賃で借りることができる。
- 退去時にDIY箇所の原状回復費用を請求されない。
収納術やDIYがメディアで取り上げられるなど、ブームを受けて、持ち家だけでなく、賃貸住宅でも自分の好きなようにDIYできる時代となりつつあります。
いろいろな工夫をして、自分だけのオリジナルの部屋を作ることができ、さらに貸し主と借り主の双方にメリットがあるDIY型賃貸住宅は、時代にマッチした新しいスタイルです。空き家の活用法として、ご検討されてはいかがでしょうか。