集合住宅では、居住する部分の「専有部」と、エントランスホールや廊下などの「共用部」に分かれているのは皆さんご存じかと思います。
それぞれのメンテナンスはどのように行われているでしょうか。賃貸物件の場合「専有部」は入居者が入れ替わるタイミングで退去リフォームとして行われます。「共用部」は週1回程度の日常清掃と、中・長期的なメンテナンスに分けて行われます。
1.共用部をきれいに整えておく目的は
ここで、共用部をきれいにする目的を改めて確認しましょう。
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1)入居者が日々気持ちよく生活できるようにするため。
2)内覧に来たお客様の印象を良くするため。
3)建物の寿命を伸ばすため。
以上の3点に集約されます。いずれも、結果としては所有物件の収益を上げることに結び付き、1)によって顧客満足度が上がり、2)によって新規顧客を獲得できる確率が上がり、3)によって資産価値が上がる、と言い換えることもできます。
2.共用部メンテナンス・時期ごとのポイント
2-1.日々のメンテナンス
第一に、こまめな清掃と連絡・通報システムの確立を行うことが大切です。
週1回程度の定期清掃はもちろんのこと、その間に汚れてしまった場合は、見つけた方が通報できるシステムが確立・周知されていることが重要です。この通報システムがあれば、オーナー以外にも目を配ってくれる人が増え、不測の事態にもすぐに対処でき、結果として建物を良い状態に保つことができます。
日常清掃は、ゴミを拾うだけでなく、長い間共用部に放置されているもの、例えばビニール傘や植え込みに隠れたゴミなどにも目を配ると良いですね。
また、数年前の張り紙や看板がそのままになっていたりしないでしょうか。もう機能していない内容のものは、直ちに撤去しましょう。古いものが残っていると、それだけで内覧に来たお客様に「きちんと管理されていないのでは?」という印象を与えてしまいます。
また、空室のポストやドアポストの粘着テープ跡も、気になる部分です。小さなことのようですが、徹底的にシールはがし剤などで除去すると、それだけで共用部がスッキリと美しく見えるのでおすすめです。
2-2.3カ月に1回程度行うこと
エントランスホールなどに窓ガラスがあれば、ガラス面の清掃もお忘れなく。ガラスが曇っていると、それだけで暗く、薄汚れた雰囲気を醸し出してしまします。
また、若干手間はかかりますが、共用廊下を時々ブラシがけすると、床面・排水溝・手すり壁を美しい状態に保つことができます。
2-3.年に1〜2回から数年に1回
敷地内に植栽があれば、剪定も定期的に行いましょう。やはり伸び放題の木々は、乱れた印象を与えますし、意図せず廊下やバルコニーに侵入して落ち葉や花粉が入居者の迷惑となることも起こりかねません。
また、放置自転車もなかなか厄介ですね。賃貸住宅でよくあるのは、退去者が引越しの際に自転車を置いていき、そのまま何年も放置されてしまうパターンです。折を見て現在使われているものかチェックし、不要なものは処分してしまいましょう。
受水槽・給水ポンプ・排水管など、水回り関係の設備・消防設備も定期点検を怠らないようにしましょう。
こまめなチェックが建物の寿命を伸ばすことにつながります。
3.効果の高い中・長期的な修繕とは
こちらは建物全体の長期修繕計画とも関連してきますが、共用部で効果的なメンテナンスは塗装部分のケアです。
特に鉄部の塗装は、数年で“はがれ”やサビが発生してきます。塗装がはがれていると見た目がダウンするだけでなく、鉄の劣化もどんどん進んでしまうため、こまめに塗り直すことが大切です。
実は共用部の塗装工事は、あまり費用がかかりません。ほぼ手の届く範囲にあるので、足場を立てる必要もなく、養生をしっかりすれば塗る工程は意外と短時間で終わってしまいます。工事費は人件費の占める割合が大きいので、工事期間が短いほど修繕費も安くなります。塗装は費用対効果の大きな修繕と言えます。
もし、廊下の手すり壁や外壁が吹き付け塗装であれば、こちらも劣化してきた場合は早めにメンテナンスしましょう。足場が必要なければ、少しの費用で見違えるように建物が若返ります。
また、普段はあまり上を見る機会がないかもしれませんが、ぜひ歩きながら天井部分もチェックしてください。照明器具は壊れていないか、天井仕上げは劣化していないか。特に共用廊下の天井は風雨にさらされるので、室内の天井に比べて、こまめなメンテナンスが必要です。暴風雨で天井材が落下し、けが人が出たなどということにならないよう早めに点検・整備しましょう。
まとめ
- 共用部をきれいに保つことは、所有物件の収益アップにつながる。
- 日々の清掃を行うほかに、汚れや不具合をオーナーや管理者に知らせるシステムを作ることで、建物を良い状態に保ちやすくする。
- 放置物や古い張り紙などは、管理の行き届いていない印象を与えるので要注意。
- ガラスの清掃は3カ月に1回程度、植栽の手入れや水周り、消防点検も定期的に行う。
- 塗装部分のケアは費用対効果の大きな修繕なので、こまめな塗り直しを。
- 天井にも目を配り、落下物でけが人が出るなどの事態を防ぐ。
専有部は退去者が出たタイミングで必然的にメンテナンスをしますが、共用部は大きなクレームや破損がない限り、なかなか手をかけにくい部分かもしれません。だからこそ、意識して日ごろの点検と整備を行い、他物件との差別化をはかりましょう。