2016年4月14日以降、熊本県と大分県で相次いで発生した熊本地震。
このような緊急事態において、被災地の賃貸マンション管理会社では、どのような対応が
なされたのでしょうか。
今回は、熊本県のとある不動産会社の賃貸・管理部リーダーのAさん(仮名)から
地震直後~現在の状況や、今後の対応などについてお話を伺いました。
Aさんのプロフィール
熊本県A市出身
不動産業界歴:5年
保有資格:宅地建物取引士、管理業務主任者等
普段の主な業務:管理物件の入退去の契約手続き、その他、建物のメンテナンス業務等など
まず、地震が起きた直後は、どのような対応をされましたか?
「本来、メールや電話で安否確認を入居者様・オーナー様全体に取るべきだったのでしょうが、業務に当たる私たち自身も避難が必要なこともあり、地震直後は何もできず、とにかく今後のことを冷静に判断しなければという気持ちでいっぱいでした。
社員やその家族の安否確認や避難完了報告を受けながら、弊社とCC(コールセンター)宛ての連絡に対応しつつ、自身の身の安全の確保で精いっぱいでした。
16日の2度目の大きな地震の直後には雨も降って混乱を極め、正直なところ業務の履歴もほとんど記憶に残っていません。
14日に起きた最初の地震から1週間ほど経ってから、ようやく構造に詳しいスタッフに最低限の建物点検を実施してもらい始めました」。
入居者の方々は、どのような様子でしたか?
「避難所に行ったほうがいいのか? この建物は大丈夫? などの電話がひっきりなしにかかってきていました。たんすや大きな家具から離れて寝ることや、生活用水は確保しておくことなどを案内しました。しかし、最終的に弊社や私個人で建物の保障は致しかねるので、安心していただけるような回答があまりできなかったのが悔やまれました。
特に女性や小さいお子様のいらっしゃるご家庭から、不安の声が多かっったです。意外にも、ご高齢の方からの問い合わせは少なかったです。地震が落ち着いた後で話をしてみると、「死ぬときは死ぬ。あわてても仕方ない」などと笑いながらおっしゃる方が多くて驚きました」。
今後、地震の対策としては、どのような手段が有効でしょうか?
「オーナー様・入居者様に限らず、【お住まいの場所から一番近くて丈夫な建物(高層であれば、なお良し)を把握しておくこと】が一番だと思います。いざというときは、最低限の手荷物で家族と一緒にその建物へ逃げましょう。お部屋のブレーカーを落としたり、ガスの元栓を締めるのもお忘れなく。お住まいの建物に居残る場合は、お風呂に目いっぱい生活用水を溜めたりすることも大切です。
マンションなどのオーナー様の場合は、所有するマンションなどの避難経路・消防設備の把握や周知を日頃から徹底しておきましょう。災害時に、建物の欠陥などのせいで入居者様が損害を被ると、損害賠償請求されるケースもあります。不安な部分は、管理会社や専門家に尋ねてみましょう」。
今後はどのような対応がなされる予定ですか?
「当社では地震から1年経過したタイミングで、地震当時から管理物件に入居されていた方々に、次のような内容の案内を出しています。
地震被害に関する調査について(一部改変しています)
この度の熊本地震では、多くの方々が被災されましたが、入居者の皆様はいかがでしたでしょうか。いまだ日常生活に支障をきたしている方もいらっしゃるかと存じます。改めてお見舞い申し上げます。
さて、ご入居の物件を管理する弊社といたしましては、現時点での賃貸物件の被害状況を確認し、その被害状況に応じて修復を検討したいと考えております。
つきましては、現在のお部屋の中の損害状況を別紙にご記入頂き郵送、またはFAX・メールにてご返送いただきますようお願い申し上げます。 ○月○○日(○) までにご返送ください。
弊社はこれからも、災害復旧に向けて尽力してまいります。皆様も健康に留意され、一日も早く日常を取り戻されますようお祈り申し上げます。
管理会社 ○○
この案内から、クロスやクロス下地・建具などの補修を一括で業者に発注し、地震によって発生した修繕コストの削減を図っています。オーナー様が地震保険に加入していても被害が少なければ保険金が降りないことがありますので、この様な手段が有効となるでしょう」。
ありがとうございました。一日も早い復旧とますますのご発展を祈念します。
まとめ
- 地震発生直後は、管理会社の社員たちも身の安全の確保で精いっぱいだった。
- 入居者からの問い合わせで多かったのは、「この建物は大丈夫か」「避難したほうがよいか」という内容。
- 地震対策として有効なのは【住まいから一番近くて丈夫な建物を把握しておくこと】。いざとなれば最小限の手荷物でそこへ逃げる。
- 避難する時は、ブレーカーを落とし、ガスの元栓を閉める。
- 住居に残る場合は、お風呂に生活用水を溜めるなどの備えを。
- オーナーは、所有するマンションなどの避難経路・消防設備の把握や周知を日ごろから徹底しておく。
- 災害時に建物の欠陥などで入居者が損害を被ると、損害賠償請求となるケースも。不安な部分は、管理会社や専門家に確認を。
- 今回インタビューした管理会社では、地震発生一年後に、物件の被害状況を聞き取り、業者へ一括で補修を発注した。
お話を伺って、やはり、日ごろから不測の事態に備えることが重要であると思いました。地震保険に加入しておけばいいという話ではなく、大家さんと管理会社の間でのシミュレーションや、入居者の方々との災害時の行動の打ち合わせなどが大切です。
この記事を参考に、災害の備えをしておきましょう。