10年近く大家を続けていると、いろいろな事が起こります。入居者から要望やクレームが入ることもあり、時にはトラブルに発展することもあります。
今回は過去に実際に起きた、入居者のトラブルの事例をご紹介します。
1.初めは感じの良い若いご夫婦に見えた
2階建てアパートで2階の入居者が退去し、しばらくして新しい若いご夫婦が入居しました。新婚のカップルで、入居時にはお父様から丁寧なあいさつをいただき、周りの
入居者へのあいさつ回りもきちんと済ませ、若いが大変感じの良いご夫婦でした。
そのカップルは入居後に結婚式を挙げ、20代前半ということもあり、友人の方々が結婚祝いや新居を見に、次々と遊びに来ているようでした。
入居後3カ月ほど過ぎたころ、1階にお住まいの方から連絡がありました。
内容としては「2階の新婚さんのところへ週に3、4回深夜までお友達が来ている。具体的に言えば、1時、2時まで話し声がひどく、帰りに駐車場まで送る際にも、笑い声などかなり声が響き大変迷惑をしている。注意してもらえないか」という内容でした。
2.階下の入居者からのクレームに対応
早速、私からご主人へ確認の連絡をしました。
ご主人は大変恐縮され、今後は気をつける旨を約束してもらいました。
その後1階の方々より再度連絡があり、「早速2階の方が謝罪に見えました。結婚したばかりで友人や職場の方が次々来られていたようですね。以後気をつけると言っておられましたよ」とお話をいただき、今後は配慮してもらえるだろうと、私もひと安心していました。
しかし、それから2カ月後、再度1階の方々より連絡がありました。今度は複数の方からで、「2階に入居されている方ですが、ご主人とはあいさつも交わし、感じの良い方ですが・・・奥様の方が、どうも不安定な方のようで大変な状況です」というのです。
3.具体的なトラブル内容を聞いて驚いた
1階の方は、私に連絡する前に、直接苦情を伝えたようです。そのたびに、ご主人は謝罪していましたが、どうも奥様の状況を抑えられない様子とのことでした。
内容を伺い、私も驚きました。どうやら奥様が「集合住宅に住む」という常識に欠けた方のようでした。
夫婦げんかの後、何度か大声で叫びながら駐車場でわめいている、クレームを伝えた階下の方と駐車場で顔を合わせるとくってかかる、ご主人のいない時など階下の方への嫌がらせのように、大きなものを明らかに故意に床にたたきつけ、それが日に十数回に及ぶ、など大変な内容でした。
4.ご主人と連絡がつかず保証人へ連絡
私からすぐご主人へ連絡しましたが、携帯電話に何度かけても連絡がつきません。
そこで、保証人で近くにお住まいのご主人の家に連絡しました。
お母様に、息子さんと連絡が取れないことを伝えると、驚いたことに、奥様の異常行動を抑えようとしてもみ合いになり、突き飛ばされて腰を打ち、今は実家で療養中とのことでした。
お母様は現在の状況をよく把握しており、「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、今は息子もこんな状況で、私たちも手が付けられないのです。普段は普通に話をするのですが、感情が昂ぶっている時など、何を言っても聞いてもらえないのです」とおっしゃいました。
5.困っていた矢先、さらなるトラブルが!
これは困った事になったと思っていた矢先、突然、深夜に警察から連絡がありました。
「お宅のアパートの入居者から連絡があり、2階に住んでいる方が大音量でテレビをつけていて、階下の方が苦情を言ったところ、玄関のドアを何度もけりつけて脅したということで警察へ連絡がありました。来てもらえますか」とのことで、すぐ駆け付けました。
現場では、パトカー2台と警察官4人が、2階の入居者のドアの前で待っていました。
私が同席の上で警察官の方がドアを開けるように求めると、中から奥様が出てきました。その容貌が最初に会った時とあまりに印象が違っていて驚きました。あいさつに見えた時は、髪が黒くストレートの長い髪で清楚な感じの方だったのですが、その時は白に近いブロンドに髪を漂白しており、同じ人とは思えない様子です。
話をしても全く会話にならず、何もしていないの一点張りで、とうとう私の判断で
再度ご主人の実家に連絡しました。
ご主人は動けないということで保証人であるお父様とお母様が来て、なんとか
奥様を実家へ連れて行ってもらいました。
6.今後の対応を司法書士に相談
しかし、これでは今後も大変だと思いました。
階下にお住まいの何人もの方から「出て行ってもらいたい」と言われており、対応策を考えねばなりません。
そこで、お世話になっている不動産会社のご夫妻とも相談し、私の父が亡くなった時お世話になった地元の司法書士の先生に相談をすることにしました。
相談内容としては「何度注意してもトラブルが収まらず、他の入居者への暴言や異常行動もあり退去を求めたいが、契約期間もかなり残っており、どのように話を進めたら良いか」いうものです。
司法書士の先生は一連の話を聞き、「これはもう退去してもらうしかないね、暴言や他の方の脅しもあり、警察まで呼んだとなれば退去を求める理由にはなりますよね。しかし、下手な言い方をすると、引っ越し費用を欲しいなど開き直る人も多い。
相手には、この一連のトラブルで階下の方が退去される様なことが起きれば、大家である私には金銭的な損害が生じる、その場合の損害を補償して欲しいと言ってみてはどうですか?」というアドバイスしてくださいました。
7.保証人へ穏便な退去を求めると
翌日、保証人であるご主人の実家へ連絡をしました。
ご両親は決して開き直る様な方ではなく、大変申し訳ないと謝罪されていました。
「お父様方にお伝えするのも心苦しいのですが、周りの方からの苦情もあり、退去をお願いしたい」旨を伝えました。
「私もアパートを経営しており、この件で階下の方々が退去されるような事が起きれば得られるはずだった家賃もいただけず、収入に響きます。その場合は、原因である息子さんやお父様へご負担をお願いすることになるのです・・・できれば穏便に退去をお願いしたいのですが」
すると、ご両親は「それは当然ですね。これ以上アパートに息子夫婦を置いておくことはできませんし、ご迷惑をおかけしていることも警察の方から、よく伺いました。私たちから息子に伝えます」とおっしゃいました。
そして、1週間ほど経って、退去日の連絡がありました。
8.退去を求めてトラブルになるケースもある
周りの大家さんや不動産会社の夫妻からは、今回は幸運でしたねと言われました。
多くの場合、退去してほしいと伝えると、突然開き直る方がほとんどで、引っ越し費用や新しい移転先の敷金・礼金も負担してほしいと言われるケースも多いそうです。
正直なところ、今回も、息子さんだけを相手に対応していたら、おそらくこのようにスムーズに退去してもらうことは難しかったと思われます。
近くに保証人の実家があり、司法書士の先生のアドバイスを受けて、ご両親を巻き込んで早めに交渉したことが最善の結果につながりました。
まとめ
- 困った入居者がいる場合、本人ときちんと話をできないケースも多い。すぐに対応してもらえる保証人の存在が、今回のトラブル解決に役立った。
- 退去をお願いすると、開き直って引っ越し費用などを求める人もいるため、司法書士など専門家のアドバイスを聞いて、慎重に話を進める。
- 他の入居者からのクレームや、それが発展した入居者間のトラブルなどが起こったら、大家としてひとつひとつに早めに対応することが大切。
この記事が皆さまのご参考となれば幸いです。