自主管理

大家さんの体験談・時期はずれの退去 長引く空室に敷金・礼金0円の効果は?

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大家さんの体験談・時期はずれの退去 長引く空室に敷金・礼金0円の効果は?

以下は、東北地方で親から引き継いだアパートを自主管理している私の体験談をもとにしたものです。立地条件が良く、家賃も良心的で、これまでは空室が出てもすぐに借り手がついていました。ところが、周囲との競争が激化したうえ、引っ越しシーズンではない時期に空室が出てしまい…。

はじめに

私が管理しているアパートは、人口5万人程度の小さな町にあり、県庁所在地から車で30分、JRの駅から徒歩10分、大型スーパーもドラッグストアやコンビニエンスストアも徒歩3分以内。立地としては、まず良い条件と言えると思います。
アパートの規模は2棟8世帯で、軽量鉄骨で築10年です。間取りはファミリー向けの2LDKですが、敷地に余裕があるため家賃に駐車場代が2台分込みで5万5千円という設定です。車の所有が一人一台のような地域で考えると、多少安い家賃設定です。

1.満室経営に向けて敷金礼金を減額

近年では大手アパートメーカーの瀟洒(しょうしゃ)なアパートが乱立して、アパート経営も厳しい時代となりました。
そんな中、今までは空室が出ても、2カ月前後で必ず満室にしてきました。これは当然、私一人の力ではありません。親の代から付き合いのある不動産会社に専任で協力をお願いして、自分なりに工夫を重ねてきたのです。
最初は敷金2カ月分、礼金も1カ月分いただいていましたが、だんだんと周囲にアパートが多くなり、礼金はいち早くカットしました。
続いて敷金も2カ月分から1カ月分へ減額し、入居月は家賃無料にするなど、なるべく入居者のご負担が少ないようハードルを下げてきました。

2.時期外れの退去で空室問題に直面

しかし、2年前の6月ごろ、ある入居者に退去された時、問題に直面しました。
それまでは上記のような条件で募集をかければ、すぐ反応があったのに、この時は1カ月以上、内覧の問い合わせがなかったのです。おおむね人の移動時期は決まっており、2月から4月後半までがピークで、それ以外の時期は、なかなか動きがありません。
そこで、周囲で同じような条件のアパートの家賃設定や設備、立地などを調べ、所有物件について、自分なりに再検討してみました。

3.実は、周囲でも値下げが始まっていた

以前は、大手アパートメーカーの家賃は比較的高額で、同じ2LDKの条件でも、私のアパートとは1万5千円以上の差が開いていました。
しかし、この地方で7万円近い家賃では、入居者を集めるのが厳しいと分かったせいか、各社で値下げが始まっていたのです。
基本家賃の設定は下げないまでも、入居から3カ月間は家賃を半額にしたり、敷金・礼金0円で募集をかけたりするなど、以前と比べて値ごろ感が出てきていました。時期はずれの数少ない入居希望者は、そのような物件へ流れているようでした。
この状況にどう対応すれば良いのかを考えました。そして、困った時はいつも相談に乗ってくださる、不動産会社のご夫婦の元に飛び込みました。

4.ライバルとの比較で見えた空室対策

私「うちと同じような2LDKのアパートで、大手アパートメーカーの初期費用がどんどん安くなっていますよね。」
夫妻「各社で値下げ競争が始まっています。最初は高額な設定で、まったく入居者が無く、1棟8室のうち半分も埋まらないというアパートが多かったんです。さすがにこれでは大変と、敷金・礼金0で“ゼロゼロ物件”にしたり、初期の家賃を値下げしたりと、さまざまなサービスをしていますね。」
私「そういえば、このようなゼロ物件は、大手がほとんどで、うちのような普通のアパートではあまり聞いたことがありません。なぜでしょうか?」
夫妻「昔からのアパートの大家さんたちは、よほどのことがないと値下げはしないものですよね。下手に安くして、敷金も入れられないような人だと、退去時にトラブルになるのではという懸念があるせいでしょう。」
夫妻の元で、大手メーカーと自主管理大家のアパートを一覧できるパンフレットを見ていると、大手は値下げはしているものの、満室になっている物件は比較的少ないことがわかりました。初期費用の設定は低くても、いずれ高額の家賃を支払うことになることを入居者も分かっているからと考えられます。
それならば、基本家賃の手ごろな私のアパートの初期費用を下げれば、入居希望の方が増えるのでないかと思い至りました。

5.敷金・礼金0円で募集した結果

私「うちのアパートも一室空いてしまい、ここしばらくまったく問い合わせがありませんよね。思い切って敷金・礼金0円で募集してみようと思うのですが、いかがでしょうか?」
夫妻「それも一つの方法ですね。トラブルにならないよう、保証会社を間に立てるか、保証人を2人くらい立てることをおすすめします。それで募集をかけてみましょうか?」
私「お願いします!」
ということで、敷金・礼金0円で募集することにしました。
結果としては、なんと半月の間に3、4件も問い合わせがあり、1カ月もしないうちにすぐ契約がまとまりました。

6.トラブルを避けるため契約は慎重に

幸いにも、入居者は地元の方で、しっかりとした保証人も用意していただいたので、保証会社は通さずに契約に至りました。
そして、不動産会社の夫妻の提案で、契約書には「退去する際は必ず費用を払うこと」「一定のホームクリーニング代や鍵交換代など、最低でもこの程度はかかるという費用の目安」を盛り込み、その内容を了承の上で記名捺(なつ)印をお願いしました。
同じ内容の契約を、保証人の方にもお願いして契約書を交わしました。
ありがたいことに、落ち着いた人柄のご家族でトラブルも一切なく、現在も入居されています。

まとめ

 正直なところ、敷金・礼金0円に踏み切る時は、やはり大家として多少ためらいがありました。しかし、だからと言って対策をしないまま空室にしておくのは、もったいない話です。
いま現在、同じような悩みを抱える大家さんへ私の結論を申し上げると、敷金・礼金0円物件はかなり効果があります。今後も、入居者が決まりにくい場合には、また試してみようと思います。その際には、今回の不動産会社夫妻のご提案のように、慎重に契約を結ぶことが重要といえるでしょう。
この記事が空室対策にお悩みの皆さまのご参考になれば幸いです。

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