法律

前オーナーの親戚が低い家賃で入居 相場より安い賃料を増額するには?

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前オーナーの親戚が低い家賃で入居 相場より安い賃料を増額するには?

Q.このたび大家を引き継ぎました。賃貸物件内に前オーナーの親戚が入居しており、その入居者の家賃が相場よりかなり安いです。家賃の増額請求をすることは可能ですか?

賃貸オーナーをしていると、特別な事情で、賃料が相場よりかなり低くなっている場合があります。今回の相談内容のように、前のオーナーから低い賃料で引き継ぐケースや、古くから賃貸借契約をしていて、近隣の相場が上がってきたケースなどが挙げられます。
このように、家賃が相場より低くなってしまったら、賃料を増額することはできるのでしょうか。
今回は、賃料を増額できる場合とその方法について解説します。

 1.賃料増額請求権とは

本件のように、賃貸借契約における賃料の額が適正でない場合、大家は賃料を増額することができるのでしょうか。
まず、このような場合、大家には賃料増額請求権が認められます。この権利は、借地借家法において定められています。
補足ですが、反対に、借り主側からの賃料減額請求も可能です。また、借家の場合だけではなく、土地を貸す場合の借地契約においても、賃料の増減額請求が認められています。

2.賃料増額が認められるケース

それでは、賃料の増額はどのような場合に認められるのでしょうか。
その要件についても、借地借家法に定められており、具体的には以下のとおりです。

  • 土地や建物に対する税金などの負担の増減により、物件の価格が上昇するなど経済変動が起こった場合
  • 近隣の同種の物件の賃料と比べて不相当になったとき

そこで、賃料増額請求が認められるためには、「現在の賃料が不相当になっていること」と「不相当になった事情の変更があること」の2点を立証する必要があります。
現在の賃料が不相当と主張するためには、適正賃料を鑑定評価などによって明らかにする必要があります。従前の賃料が不相当になった事情の変更については、税金の増減や土地建物の価格上昇などが代表的な要因ですが、それに限らず、個人的な関係による事情の変動も含まれると考えられます(判例:最判平成5年11月26日、東京高裁平成18年11月30日)。

3.増額が認められた判例について

それでは、実際に賃料増額請求が認められるのはどのような場合でしょうか。賃料が相場と比べて具体的にどのくらい低いのか例に挙げて見ていきましょう。

3-1.判例1(東京高裁平成18年11月30日)

ここで、相談の件と類似した判例があるので紹介します。
このケースでは、もともと大家の代表者と借り主が親子であったため、低廉な賃料が設定されていました。具体的には、賃料が146万円、共益費が38万円でした。
両者の合意によって、賃料が159万円、共益費が42万円に増額された経緯はありましたが、それでも周辺と比べると低廉でした。
その後、賃貸オーナーが変わり、新しいオーナーは賃料が不相当に低いと考えたために裁判を起こしました。裁判所は、相当な賃料は362万円と判断して賃料の増額を認めました。
このケースでは、もともと大家の代表者と借り主に親子関係があったが、新オーナーに変わったことでそのような個人的関係がなくなったこと、近隣の賃料と比べて賃料が著しく低額になっていることが評価されています。

3-2.判例2(大阪高裁平成20年4月30日)

もう一つ、判例を紹介します。
この事例では、テナント物件で借り主が飲食店を経営しており、当物件に移転して軌道に乗るまでは支払いが苦しいという事情を考慮して、低めの賃料に設定していました。具体的には、当初の賃料は583800円でした。
ただ、この金額は近隣に比べて低く、年数も経過したことから、大家が契約締結後約3年を置いて賃料増額請求をしました。
裁判所は、賃料が近隣の相場より低く設定されていたこと、当初は借り主の事業経営に配慮して低めの賃料を設定した事情、大家がもともと3年後の賃料改定を要求していた事情などを評価して、結果的に778400円への賃料増額を認めました。
以上のように、賃料増額が認められるのは、単純に賃料が近隣より安いというだけではなく、賃料が不相当になった事情についても評価されたケースが多いです。
相談のケースでは、契約当事者が親戚だったために賃料を低く設定した「事情」があるので、賃料が実際に近隣の相場より不相当に安いと立証できれば、賃料増額を認められる可能性が高いです。

まとめ

  • 大家は、賃料が不相当と考える場合、賃料増額請求権を行使できる。
  • 賃料増額が認められるのは、賃料を設定した時と経済事情その他の事情に変更があったこと、賃料が実際に近隣の相場と比べて不相当になっている場合である。
  • 賃料増額請求を認めてもらうためには、賃料が不相当になっていること、賃料が不相当になった事情変更の2点を立証する必要がある。

もし、所有物件の現在の賃料が不相当であると考えるなら、今回の内容を踏まえて、賃料増額請求権を行使すると良いでしょう。

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