税金・相続

住宅費を経費に計上するポイント~個人・法人ケース別に詳しく解説~

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住宅費を経費に計上するポイント~個人・法人ケース別に詳しく解説~

不動産を経営する大家が、住宅費を経費に計上するには、どのような方法があるでしょうか。大家が個人事業主か法人か、また、住宅の形態によっても異なります。ケースごとに確認してみましょう。

1.個人事業主の大家の場合

1-1.賃貸住宅を住居とするケース

個人事業主の大家が賃貸住宅で、家賃を支払っている場合です。
この場合、事務所として仕事用に使う「事業使用割合」と、それ以外の日常生活に使う「家事使用割合」に区分して、そのうち「事業使用割合」分を経費とすることができます。
一般的に、事業使用割合は床面積を基準に決定します。例えば自宅面積が100㎡で、事業用部分が50㎡の場合は、家賃の50%が経費となります。
ただし、この床面積を厳密に区分するのは、なかなか難しいです。例えば、玄関や廊下、トイレなどの共有部分、生活用と仕事用の併用の部屋などはどうするのかという問題が生じます。目安としては、これらのスペースは事業割合を30%から50%にするのが妥当といえます。
なお、水道光熱費の場合の家事按分(※)は使用割合で行うべきですが、計算にかなり手間がかかります。これに関しては、経費とする家賃の比率に適用した事業使用割合を用いるのが妥当でしょう。
※=事業用と日常生活用の部分を合理的に振り分けて経費計上すること

1-2.住宅ローン等で購入して支払うケース

大家が自宅用に物件を購入する場合、住宅ローンを利用することが多いでしょう。これについては住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用することができ、税金上のメリットとなります。ただし、以下の要件を満たす必要があります。

    (1) 新築または取得の日から6カ月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
    (注) その者が死亡した日の属する年または家屋が災害により居住の用に供することができなくなった日の属する年にあっては、これらの日まで引き続き住んでいること。
    なお、居住の用に供する住宅を二つ以上所有する場合には、主として居住の用に供する一つの住宅に限られます。
    (2) この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3千万円以下であること。
    (3) 新築または取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること。
    ただし、店舗や事務所などと併用になっている住宅の場合は、店舗や事務所などの部分も含めた建物全体の床面積によって判断します。
    (4) 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築又は取得のための一定の借入金又は債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含みます。)があること。

引用元はこちら→国税庁HP:住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

この税額控除を受けるには、居住住宅部分のうち、事業使用割合を10%以下にしておくことが望ましいでしょう。なぜなら、そうすれば税額控除を100%受けることができるからです。10%以上であっても、税額控除は受けられますが、事業用の面積が増えるにしたがって、税額控除の金額は縮小していき、50%を超えると税額控除が受けられなくなるので注意が必要です。
また、持ち家の場合には、建物の減価償却費、固定資産税、火災保険料などの費用が発生します。これらの費用のうち、事務所として仕事に使う事業使用割合分を経費とすることができます。
例えば、事務所部分が20㎡、プライベート部分が30㎡、共有部分が10㎡としましょう。この場合、共有部分のうち、事務所部分は、10㎡×20㎡/(20㎡+30㎡)=4㎡、プライベート部分は10㎡×30㎡/(20㎡+30㎡)=6㎡となります。よって、事務所部分は20㎡+4㎡=24㎡、プライベート部分は、30㎡+6㎡=36㎡となり、事業使用割合は、24㎡/(24㎡+36㎡)=40%となります。建物の減価償却費、固定資産税、火災保険料などの費用に、この事業使用割合をかけた部分を経費とすることができます。
補足としては、個人事業主の場合は、事業用割合の根拠となる書類を保管しておき、税務署に事業用であることを説明する必要があります。

2.法人の大家の場合

ここまで、大家が個人事業主の場合を見てきました。個人の場合、住宅費などの家事関連費(※)は、事業用部分を経費として扱うことができますが、その割合は一般的に3割程度となります。
これが法人化すると、「社宅」として扱うことができるなどのメリットがあり、経費として算入できる割合が高くなります。
※=家賃、光熱費、電話代など、事業用とプライベート用が混在している支出。

2-1.「社宅」として借り上げる場合

法人の大家が賃貸住宅に住む場合、「社宅」として借り上げることで、経費を多く計上することが可能です。例えば、家賃が月10万円であれば、年間で120万円を経費として計上できます。その結果、利益を抑えて節税することができます。

2-2.法人で所有して貸し出す場合

また、社宅を法人で所有して、それを役員に賃貸する方法もあります。この場合、家賃のほかに、建物の減価償却費や借入金の利息なども経費として算入できるようになります。所有することで、結果的に大きな節税効果をもたらすといえます。
2-1,2-2いずれの場合も、その家に住む役員から、1カ月当たり一定額を「家賃」として会社が受け取っていた場合、賃料の全額を経費とすることができます。
一定額の基準は、役員の社宅面積によって異なり、具体的には以下のようになります。
役員の負担額が基準を満たさない場合は、給与に課税されることになるので注意が必要です。

1役員に貸与する社宅が小規模な住宅(※3)である場合

次の(1)から(3)の合計額が賃貸料相当額になります。

    (1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
    (2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
    (3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

※小規模な住宅とは、建物の耐用年数が30年以下の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、建物の耐用年数が30年を超える場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。

2 役員に貸与する社宅が小規模な住宅でない場合

自社所有の社宅の場合
次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。

    イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
     ただし、建物の耐用年数が30年を超える場合には12%ではなく、10%を乗じます。
    ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
    この社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅である場合は、次の算式の適用はなく、時価(実勢価額)が賃貸料相当額になります。

※いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものについては、原則として、プール等や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものを除き、次の算式によることとなります。

引用元はこちら→国税庁HP:役員に社宅などを貸したとき

まとめ

  • 個人事業主の大家が賃貸住宅を事務所兼自宅とする場合、住宅費のうち事業使用割合を経費とする。
  • 個人事業主の大家が持ち家を事務所兼自宅とする場合、減価償却費や固定資産税、火災保険料なども事業割合に応じて経費にできる。
  • 法人の大家の場合、借り上げ社宅とすることで多くを経費計上できるメリットがある。
  • 法人として社宅を所有すると、減価償却費など経費算入できるものが増え、節税につながる。

個人・法人いずれの場合も、住宅費を経費とする上で不明な部分は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。

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