賃貸物件のトラブルは、入居時と退去時に起きることが多いです。ただし、入居時については、仲介業者が契約内容をきちんと説明していれば、トラブルになるケースは少ないです。大家側が困るのは、ほとんどの場合、退去時のトラブルです。
なぜ、入退去時にトラブルになることが多いのでしょうか。また、トラブルを防ぐにはどんなことを注意すれば良いのでしょうか。仲介業者に勤めた経歴があり、大家でもある著者が、そのことについてお伝えしたいと思います。
1.入居時の立ち会いが退去トラブルを防ぐ
退去時にトラブルを招く原因として最も多いのが、退去時にかかる費用の負担についてです。これは昔から無くなることの無いトラブルで、正直なところ、今後も皆無になることはないでしょう。
しかし、このトラブルは未然に予防することができます。そのためには、入居時にきちんと大家と入居者が顔を合わせて立ち会いをすることです。遠方の大家さんには、なかなか難しいですが、その場合はプロの管理会社にすべてを任せているかと思うので、ここでは例外とします。
2.入居時チェックシートで確認
立ち会いを行うのに、特に難しいことはありません。お互いに初めて会うかと思うので、あいさつに始まって、軽く会話をすると良いと思います。
その後、私も利用していますが、入居時チェックシートというチェックリストの書類を用意して入居者に説明します。このチェックリストは、入居時の壁や床、窓のパッキン、水回りの汚れ、扉の立て付けなど、物件のさまざまな箇所を一緒に確認するためのものです。
入居前の清掃や内装は大家が行っているので、最初からある傷などは、こちらから伝えて、該当箇所は退去時の請求の対象外とすることをチェックリストに記載します。
チェックリストは契約書とともに退去時まで必ず保管してもらうよう、借り主にお願いしましょう。入居時にあった傷や汚れは、写真に撮影して、チェックリストとともに保管しておきます。この時、写真の該当箇所に①など、印を付けておくとわかりやすいです。
※ここからダウンロードしてご活用ください。→入居時チェックシート
3.入居時の立ち会いは大家のマナー
入居時に立ち会いをするのは、慣れてしまえばさほど難しいことではありません。逆に、管理会社に任せきりだと、どのような内容で行っているのか分からないので不安と言えます。
また、入居時に立ち会いをすれば、どんな入居者なのか、また逆に、どんな大家なのか、お互いに知る機会となります。お互いのことを全く知らず、家賃を支払う・支払われるの関係だけというのは、自分には考えられません。入居時の立ち会いは、長く入居してもらうための大家としての義務だと私は思います。
4.鍵のトラブルは入居時に説明を
入居してすぐに起こり得るトラブルのひとつに、鍵の紛失があります。この場合は、スペアキーを渡すのではなく、シリンダー交換料を支払ってもらい、必ず新しい鍵にドアノブごと替えることがセキュリティーの上で大切です。鍵を紛失した場合、その費用(1~2万円)がかかることを、契約時もしくは入居時に必ず話しておくようにします。
最初に話しておかないと、いざ失くした時に費用が発生すると伝えても、入居者によっては、費用のことを聞いていないと主張することもあるのでご注意ください。
5.退去費用はあらかじめ契約書に明記
入居時にしっかりと立ち会いをしても、退去時の費用をどうしても抑えたくて、不満を表す入居者は多くいます。
なので、そうならないように契約書にあらかじめ明記しておくことをおすすめします。例えば、固定でかかる清掃料として、単身で2万円前後、ファミリー物件では3~6万円程度を負担してもうらう旨を記載したり、自然損耗以外の修繕費が発生した場合、敷金から控除する旨を記載したりすることは、非常に大事だと思います。
6.敷金礼金無しの物件こそ費用を明確に
入居時に敷金礼金を無しにしている物件も最近は多いですが、このような物件ほど、退去時の費用をより明確に契約書に記載しておくべきだと思います。
絶対にやめたほうが良いのは、「実費にて借り主は清掃料を支払うものとする」など、あいまいな記載を契約書の特約事項にすることです。入居者側も、退去する時にいくらかかるのだろうと、契約時から不安になります。
入居者が学生の場合、親が保証人となることがほとんどなので、物件を汚されてもトラブルになることは少ないとは思います。しかし、その場合でも、固定費用を記載して預かる方向にした方が良いと思います。
7.退去時の立ち会いはココに注意
退去時も、入居時と同じく立ち会いをして鍵を返却してもらう作業が必要となります。その際に、入居時に記載したチェックリストと、できれば賃貸借契約書を持ってきてもらいます。契約書に関しては、大家側で、書類を保管することはもちろん、PDFなどのファイル形式でパソコンなどにデータ保管しておくことをおすすめします。
退去時は入居時と同様、傷や汚れのチェックをします。基準となるのは国土交通省で発行しているガイドラインです。ただ、このガイドラインに関しては法律で定められたものではなく、あくまでもトラブルが起きないための一般的な基準として考えてもらえればと思います。
壁紙がはがれている、タバコのヤニ汚れがひどい、結露を放置してカビが床に発生しているなど、借り主が「善良な管理者の注意義務」を違反したことによる汚損や破損については、当然全額を請求できます。また、借り主が万が一支払えない場合には、保証人に請求して、もちろん問題はありません。そして、退去する人には、必ず次の引越し先を聞いておきましょう。
8.タバコのヤニ汚れは契約書に明記を
先ほどの話の中でタバコとありましたが、退去時に最もトラブルになりやすい要因のひとつです。したがって、契約書の特約欄には「退去時にかかる、タバコのヤニ汚れによるクロスや天井の張り替え費用については、全額借り主が負担するものとする」とあらかじめ記載しておくべきだと思います。なお、タバコは嗜好品として扱われるため、通常の生活で発生した汚れとは見なされません。
特に部屋の状態に問題がなく、きれいに居住した入居者に対しては、契約時に交わした清掃料だけもらい、立ち会いはスムーズに完了しましょう。その場合は、敷金も現金で用意しておき、できればその場で返すと良いと思います。
まとめ
以上のように、入居時と退去時には、さまざまなトラブルの起こる可能性があります。こういったトラブルを未然に防ぐには、どうしたら良いかわからない大家さんも、たくさんいらっしゃるかと思います。そんな時、今回の記事を参照していただき、お役に立てることを願っています。