今どきのアパートやマンションでは、インターネットの利用、特に光回線を通じた利用ができるのが一般的でしょう。
今回は賃貸アパートやマンションで、NTTフレッツマンションプランなどを導入済みにもかかわらず、配管トラブルなど設備不良でインターネットが開通できなかった場合の対処方法について解説します。
記事内容は、インターネットを広く提供しているNTTフレッツの開通工事をもとに執筆していることを、あらかじめご了承ください。
1.一般的なネット開通工事とは?
おおむね4戸以上の賃貸物件では、MDFと呼ばれるインターネットの引き込み部分を建物内の共有部分に設置し、そこから各部屋へ配管を使って光ケーブルを通します。
そして、室内に設置されるルーターでインターネット信号を確認し、開通工事が終わりとなります。
しかし、この配管が経年劣化などで、つぶれたり破損やずれが生じるなどして、光ケーブルが通せず、インターネットが開通できない場合があります。
入居者募集時にはインターネット利用可能と告知しているにもかかわらず、利用できないとなれば入居者からのクレームにつながりかねません。
今までは、このように光回線が利用できない場合は、代わりにアナログの電話回線を利用したADSL回線というインターネットを利用し、速度が多少遅くても入居者に納得してもらう方法がありました。
しかし、2016年6月よりNTT東西でADSLの新規開通を終了したため、このやり方は昨年から利用できなくなっているのです。
2.開通しない場合の4つの対応
では、インターネットを提供できない部屋がある場合、どう対処すれば良いのでしょうか。以下の4つの方法を紹介します。
2-1.直接部屋へ引き込みをする方法
これは、建物付近の電信柱から、じかに光ケーブルを部屋へ引き込む方法です。ただし高さ制限があり、せいぜい3階までしか対応ができません。
費用の面では、マンションタイプのインターネット回線よりも工事料金が平均3000円
前後高くなり、月額料金も1000円ほど高くなります。入居者にとっては、設備上の問
題で、自分の部屋だけ高額な料金を支払うことになり、不満の出ることも多いです。
また、開通工事の時には、光ケーブルを固定させるため外壁にビス留めを1、2カ所は必ず打ち、エアコンダクトのすき間などを利用できない場合は壁に1センチ位の小さな穴を開けることが必要になります。
利点としては、料金が高い分、他の部屋よりも安定した速度で利用できるという点が
あります。
2-2.高層階での対応方法はEPS
先ほど紹介した直接引き込みをする方法では、4階以上の部屋には対応できません。その場合は、各階のEPSから各部屋へ引き込みをする方法があります。
ドアに「EPS」と書かれている部屋をご覧になったことはありませんか? これは建物全体に引き込まれた電気・インターネット回線の配線・アナログ固定電話配線など電気通信関係の配線を、各階に共有スペースを設けて管理する場所です。
4階以上の部屋の場合は、各階のEPSから利用する部屋まで配管を作り、その中に光ケーブルを通して開通させる方法があります。
費用の面では、直接引き込みと同じ工事料金と月額料金がかかり、入居者の金額の負担が大きくなります。この点については、他の部屋よりも高速でインターネットが利用できるという利点をアピールするか、あるいは管理費などを多少値引きして金額の負担を減らすことで納得してもらうなどの方法もあるでしょう。
NTTのマンションタイプが利用できなければ、他社を利用すればよいのでは?そのように思う方もいらっしゃるかと思います。
しかし、NTTフレッツ光が導入された既設アパートやマンションでは、建物内の配管がふさがれており、ほかの光回線の追加導入は難しい場合がほとんどです。
長い目で見れば、アパート屋内配管を修繕する方法がベストです。ただし、場所の確保や高額な費用の負担が難しい場合は、先に紹介した方法で直接部屋へ引き込み工事をするのが現実的です。
2-3.アパートWIFIを設置する方法
さまざまな制限によって、直接部屋への引き込みがどうしてもできない場合の対応策として、アパートに無線設備を導入する方法があります。
これは無線機器メーカーとして有名なバッファローが展開している、アパートWIFIが代表的です。
従来のマンションタイプと違い、外壁に無線機器を設置するだけなので、比較的簡単な工事で完了するようです。大家負担は月額1万円~と比較的手頃です。
ただし、このような無線中心でインターネット配線を導入できるのは、比較的小規模のアパートのみとなります。コンクリート構造や2DK以上の間取りでは、この方法は利用できません。
また、アパートWIFIの場合は、建物全体で無線を利用するため、セキュリティーの面で安全性が低くなりがちです。無線パスワードが使い回されたりしないよう、しっかりと管理する必要があります。
小規模のアパートで、建物全体の配管設備が劣化してきものの、大がかりな修繕が難しいのであれば、セキュリティー管理をしっかりした上でバッファローのアパートWIFIを使うのも、ひとつの手段です。
2-4.個々の部屋へ無線機器を設置する方法
最後に紹介するのは、配管を使わず個々の部屋へ無線機器を設置する方法で、これにはソフトバンクのSoftBank Airという商品があります。
室内に少し大きめの無線ルーターを設置し、スマートフォンで利用するLTE回線や4G回線を、この無線ルーターを経由してインターネットを利用する方法です。
少し大きめのポケットWIFIというイメージでしょうか。データ無制限なのはありがたいですが、ソフトバンクも宣伝しているように、速度はADSLより若干速い程度です。
提供エリアとしては、LTE回線や4G回線提供エリアであれば設置可能のようです。料金は機器を購入すると毎月4880円、レンタルなら5370円です。
設備上のトラブルで、ひと部屋だけインターネットが提供できず、さらに直接引き込みが不可能となれば、このSOFTBANK Airを代わりに設置するのがもっとも手軽な方法だと思います。
まとめ
設備上の問題で、インターネット開通できない部屋がある場合の対処法について見てきました。紹介した4つの方法には、それぞれ条件やメリット・デメリットがあります。それを踏まえた上で入居者と話し合いを重ね、不満が出ない方法をとることが、安定した賃貸経営の基本です。皆さまのご参考になれば幸いです。