税金・相続

大家さんが法人化を検討する時 知っておきたいメリット、デメリットとは?

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法人化メリットデメリット

個人事業主である大家さんが、一度は検討するのが法人化ではないでしょうか。ある程度の売り上げがある場合、法人化することで節税などのメリットが得られる一方、設立に費用や手続きを要するので、慎重な検討が必要といえます。

ここでは、大家さんが法人化することのメリット、デメリットについて見ていきましょう。

【法人化のメリットとは】

1. 社会的な信用度が増し、代表個人で連帯保証が可能

法人とは「法人格を持つ」ことなので、法人名義にすることで社会的な信用が高まり、融資を受けやすくなるなどのメリットがあります。
また、物件購入などで融資を受ける場合、法人の代表個人が連帯保証人となることができるので、たとえば配偶者や家族の理解が得られない場合も、資金の借り入れが可能となります。

2.節税の大きなチャンスがある

法人化の大きなメリットとして注目されるのが、税金の面です。不動産経営と切り離すことのできない「税金」をさまざまな面で節約できる可能性があります。

2-1. 税率差による節税。ところで所得税と法人税の違いって?

個人事業主に課せられる「所得税」は、所得に応じてその割合が増える「累進課税」です。195万円以下の税率5%から、4000万円超の45%まで7段階に分かれています。なお、サラリーマンと大家の兼業の場合、それぞれの所得を合算した金額の税率となります。
一方、法人に課せられる「法人税」は、所得に対して増える割合が少なく、400万円以下、400~800万円、800万円超の3段階に分かれます。法人税は、近年の税改正により年々引き下げられており、今後も変化していくものと見られます。
つまり、ある程度の売り上げがある場合は、法人化することで税負担が軽減されるメリットがあります。ただし、個人と法人では、住民税や事業税などの税率も異なるので、それらをすべて含めて計算し、どちらのほうが得か見極める必要があるでしょう。

2-2. 所得の分散による節税・個人では認められないものが経費に

役員報酬による節税

たとえば会社を設立し、社長として「役員報酬」を受け取る場合、その一定の割合を「給与所得控除額」として非課税対象とすることができます。
さらに、家族などを役員とし、先ほど記した所得税の税率を踏まえた上で、所得を配分することはさらなる節税につながります。ただし、事実上そこで仕事をしていることが原則となります。

経費として参入できるものの増加

会社を設立すると、個人事業主では認められなかったものを「経費」として計上できるようになります。

例)保険
たとえば、代表の生命保険やがん保険などが挙げられます。法人向けの保険にはさまざまな種類があり、タイプによっては、掛け金をすべて経費として計上することができます。保険金の支払いによって納税額を減らしつつ、物件の大規模修繕など、将来的にお金が必要となった時に、解約払戻金を活用する人もいます。

例)役員の借り上げ社宅
役員へ「借り上げ社宅」を用意すると、物件のオーナーに支払う家賃などを経費として計上することができます。社宅に住む役員から、1カ月当たり一定額の家賃を受け取る必要がありますが、個人で賃貸契約をする場合より低くすることができます。
個人事業主では「生活費」であった住居費を「経費」とすることで、手元資金を増やすことができるといえます。ただし、税務上の関係で法人から役員個人に対し賃料を取る必要はあります。詳細は、国税庁HPの「役員に社宅などを貸したとき」を参照してください。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2600.htm

例)退職金
将来的に事業から引退する時、法人の場合では代表も役員も「退職金」を受け取ることができます。退職金は控除額が大きいため、実質的に全額が非課税となる場合が多く、受け取る側にとって節税になります。会社側から見ても、事業の利益を退職金に充てることで非課税対象となり、大きな節税効果を生みます。

2-3. 土地や建物を手放す時にもメリットが

土地や建物を売却した時、得られる金額(譲渡所得)に対して課せられる税金を「分離課税」といい、他の所得と区別して計算します。物件の所有期間によって適用税率が異なり、5年以下の「短期」で売却した時、個人なら39%の税が課せられますが(ただし、居住用の土地建物売却の場合には「短期」でも3000万円の特別控除の特例が使えます)、法人の場合にはそれがありません。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3211.htm

(例)
 課税短期譲渡所得金額が800万円の場合
(1) 所得税
800万円×30%=240万円
(2) 復興特別所得税
240万円×2.1%=5万400円
(3) 住民税
800万円×9%=72万円

2-4. 相続税がかからないこと

個人事業主の場合、経営者個人が死亡すると、すべての財産が相続の対象になりますが、法人の場合、会社の所有財産には相続税がかかりません(ただし、経営者が所有していた株式には、相続税がかかります)。
多くの資産家が、不動産や財産の管理会社を所有するのはこのメリットがあるからです。

そのほか、建物を新築するとき物件にかかる消費税を還付できるスキームがあります。具体的には、物件購入前に税理士に相談して準備してからのぞみましょう。

【法人化のデメリットとは】

法人化のメリットをここまで見てきましたが、デメリットにはどのようなことがあるでしょうか。

まず、設立に費用がかかることです。株式会社の場合は、定款認証料と登録免許税だけでも20万円以上の費用が必要となります。なお、2005年の新会社法施工により登場した「合同会社」は、登録免許税の6万円で設立できるため、費用を抑えるためには視野に入れて考えてもよさそうです。

また、会計処理や確定申告が個人事業主よりも複雑になるため、税理士に依頼するケースが多くなり、そのぶん費用がかかります。確定申告の報酬は10万円以上が一般的です。大家さん自ら申告する人もいますが、税務調査が入って苦労することもあるので、専門家に頼むことも必要経費として検討するのが賢明と言えそうです。

また、法人の場合には、個人と違い、たとえ赤字でも払わなければならない税金があります。それは法人住民税の均等割です。均等割額については、各都道府県、各市町村によって異なるため、各都道府県、各市町村のHPをご参照下さい。
目安として、毎年7万円はかかると考えておいたほうがよいです。

 さらに、法人の場合には、事業の廃止にも費用がかかります。税金の滞納や借金が無い場合は清算の手続きをしますが、下記の登記費用は最低でもかかってきます。

  • ・解散登記3万円
  • ・清算結了登記2千円

まとめ

法人化することで、節税などさまざまなメリットがあることを、ここまで見てきました。一般に、法人化でメリットを受けられる売上の目安は、家賃収入と給与所得の合計額が1000~2000万円程度とも言われています。しかし、配偶者を雇用しながら、パートとかけ持ちさせるなど、工夫をしながら税率差を活用していけば、この限りではありません。
今後、事業を拡大していくつもりであれば、おすすめといえます。事業の規模や個人の状況によって異なるので、専門家や家族と話し合いながら、法人化を検討してみましょう。

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